【特集】ゴム関連の海外進出<中国編>
イノアックコーポレーション、中国事業展開を語る-環境規制により事業に制約も
工業用品 2017-05-11
イノアックコーポレーションは現在、主な海外現地法人だけでも13カ国に約80社を数える。そのうち中国には自動車部品や高機能材料などを中心に27社を持ち、連結売上高の約20%を中国事業が占めている。今後の中国ビジネスについて、同社の河村政春常務執行役員・高機能材料事業本部長兼営業本部長に聞いた。河村氏は「今後は生産拠点というよりも市場として見ていく」と、次のように話す。
■進出の経緯
当社は1950年代後半からスリランカ、60年代後半から東南アジア(タイ、インドネシア)、80年代から北米でウレタン、ゴム、自動車部品事業を中心に現地生産を行ってきたが、中国進出は94年からと、他地域と比較してやや遅れた。遅れた理由は、中国の改革開放政策の行方を慎重に見極めたうえでの進出だったからだ。その後、情報機器メーカーが国内から中国・華南地区を中心に生産拠点を移した。それを契機に華南地区へ進出。さらに自動車部品事業、ボトル事業などの足掛かりを求めて上海地区へと進出した。2000年代前半からは、発泡品、自動車部品事業を各地で本格的に立ち上げ、現在、自動車部品事業は華翔集団との合弁で5社(15拠点)、高機能材料事業は22社、計27社の生産会社を持ち運営している。
■中国事業の現況
16年12月期でみると、国内・海外を合算した売上高は約4,400億円(国内連結を除く)となり、この中で中国事業は約900億円、20%を占めた。海外売上構成比を地域別にみると中国は2位だ。ちなみに北米が23%で1位、3位がタイで12%、4位がアジアで10%という順位になっている。特に自動車部品では、中国の自動車生産が2000年代に入ってから急激に増えたことから、当社もティア1として現地の欧米系自動車メーカーに納入を拡大するなど、中国での主軸事業として展開していった。その結果、中国の売り上げ900億円の約半分を自動車部品が占めている。
■中国ビジネスの課題
中国事業の売上構成比は20%だが、利益面の貢献度でみるとかなり高く、堅調に推移している。ただ会社の方針としては現在、環境に関する投資は行っていくが、生産能力増強などの拡大路線はとらないことにしている。この理由として、当社は上海にウレタンフォームの工場を持つが、上海では年々VOC(揮発性有機化合物)の規制が非常に厳しくなっている。さらに東莞のゴム工場周辺では、マンションなどの建設ラッシュで近隣住民に対する臭いの問題が起きている。中国の環境規制により事業に制約が出る恐れがあり、工場移転を余儀なくされるのではないかと危惧している。
■今後の事業戦略
これからは生産拠点というよりも、消費マーケットとして中国を見ていくことになるだろう。中国国内で増強投資するよりも、高付加価値製品を日本から輸出することを考えていきたい。自動車部品は引き続き合弁事業を維持し、高機能材料事業では付加価値の高いデバイス(機器・装置)などが今後有望になるのではないかとみている。
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