PAGE TOP

買収額は最大規模の1356億円

横浜ゴムがオランダの農機・建機タイヤ会社を買収

タイヤ 2016-04-04

記者会見する右から横浜ゴム南雲会長兼CEO、同山石取締役執行役員、ATG創業者マハンサリア氏

記者会見する右から横浜ゴム南雲会長兼CEO、同山石取締役執行役員、ATG創業者マハンサリア氏


 横浜ゴムは3月25日、生産財タイヤ事業拡大のため、オランダのタイヤ会社「アライアンス・タイヤ・グループ(ATG)」の全株式を取得することを、同社の株式を保有するグローバル投資会社のKKRその他の株主と合意したと発表した。買収金額は11億7900万ドル(約1356億円)で、横浜ゴムとして過去最大規模となる。自己資金および銀行借入で調達し、買収完了は各国の独禁法許可の取得後の16年7月1日を想定している。
 
 

生産財タイヤ事業拡大へ

 横浜ゴムは3月28日、東京・内幸町の帝国ホテルで改めて記者会見を開いた。同社の南雲忠信会長兼CEOと山石昌孝取締役執行役員、ATGの創業者および株主のヨゲッシュ・マハンサリア氏が出席。会見の冒頭、南雲会長兼CEOは、ATG買収の意義について次のように話した。

 「当社は2006年から中期経営計画『GD100』をスタートさせ、17年に売上高1兆円、営業利益1000億円の目標を掲げた。14年まで順調に成長してきたが、その後の経済・社会情勢の変化もあって、17年の目標を売上高7700億円、営業利益800億円に設定した。

 その後、14年度に営業利益が591億円と過去最高を達成したが、15年度は売上高が増加したものの、営業利益は545億円に終わった。直近の業績とGD100の目標にギャップが生じたため、打開策としてATGを買収することにした。

 現在取り組んでいるGD100のフェーズⅣでは、生産財タイヤ事業の拡大、M&Aの推進を掲げているので、ATGは最適であると考えた」

 続いて山石取締役がATGの企業概要を説明。それによるとATGは、農業機械用、産業機械用、建設機械用、林業機械用タイヤの製造・販売に特化し、各々のラジアルタイヤ、バイアスタイヤをインド、イスラエルの3カ所の生産拠点から欧州、北米を中心に世界120カ国以上に販売している。ATGを買収することで、横浜ゴムの生産財タイヤのラインアップに農業機械用、林業機械用タイヤが新たに加わる。

 同社からみたATGの強みは、①高い成長力②高い収益性③農業・産業用機械タイヤ分野でのブランド力にあるとしている。特にグローバル農機市場は14年以降、年平均5.7%の成長が見込まれるが、ATGの売上高は同8.5%、営業利益は同12.7%と、需要予測を上回る成長が見込まれる。また16年のATGの営業利益率は、13年比2.1%増加し、20.0%となる見込み。

 さらにATG買収による戦略的意義について、横浜ゴムでは次の4点をあげる。1つは生産財タイヤ事業を強化することで、従来は消費財タイヤ80%、生産財タイヤ20%であった売上高構成比が、買収後は生産財が29%と、3割近くまで高まると予想する。

 2つめはATGの高い成長性と収益性を取り込むことで、タイヤ事業の収益力の安定・強化が可能となること。3つめはATGの収益性の高い農機用、オフザロード用タイヤ事業を獲得することで、生産財の製品ラインアップ拡充が可能。

 4つめは販売網の拡大、共同・最適購買によるコストダウン、生産・物流効率の向上、ブランド力の活用といったシナジー効果が見込まれる。同社では3年後、シナジー効果は営業利益ベースで1500万ドル以上は出したいとしている。

人気連載

  • マーケット
  • ゴム業界の常識
  • 海から考えるカーボンニュートラル
  • つたえること・つたわるもの
  • ベルギー
  • 気になったので聞いてみた
  • とある市場の天然ゴム先物