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買収額は最大規模の1356億円

横浜ゴムがオランダの農機・建機タイヤ会社を買収

タイヤ 2016-04-04

 会見の最後にATG創業者のマハンサリア氏が「横浜ゴムとのパートナーシップにより、産業分野から農業、林業分野までの専門タイヤで、数年のうちに世界のリーダーの一角を占めたい」と話した。
 
 

南雲会長 「農機タイヤ、景気に左右されず」

 横浜ゴムが3月28日開催したオランダのタイヤ会社買収に関する記者会見の席上、同社の南雲忠信会長兼CEO、山石昌孝取締役執行役員と報道陣との主な質疑は次の通り。

 ■農機用タイヤ等を扱うアライアンス・タイヤ・グループ(ATG)を買収する理由は。
 南雲 「農機用は景気動向に左右されないからだ。建機用、トラック・バス用タイヤはリーマン・ショックの時に販売が落ち込んだが、データから見ても他のタイヤに比べ、農機用はマイナスになることなく安定していた。買収を検討するにあたって、景気に左右されないものを取り込むべきと考えた」

 ■ATGの魅力は何か。
 南雲 「『アライアンス』は1950年にイスラエルで設立した老舗農業車両用タイヤブランドで、技術力も高く、他のタイヤ会社にオフテイクも行っている。現在はインドに生産拠点を移しており、低コスト生産がATGの成功の要因とみている。特にインドの低コスト工場は販管費などをかけずに販売するなど、収益性が高い。そうしたビジネスモデルを我々も学びたい」

 ■買収金額11.8億ドルは高いのでは。
 山石 「買収価格は証券会社2社で評価してもらったので、適切な価格とみている」

 ■買収によるシナジー効果をどのようにみているか。
 山石 「販売網の拡大や共同・最適購買によるコストダウン、ブランド力の活用などで、3年後には年間1500万ドルのプラスαのシナジー効果を出したい。ブランド力活用では、生産財にとどまらず消費財にも広げていきたい」

 ■ATGの農機用タイヤのシェアは。
 山石 「農機用のグローバル市場規模は60億ドル(約7200億円)とみられる。その中でATGは、欧米で10%前後のシェアをもつ」

 ■クムホと技術契約を行っているが、今後資本提携はあり得るのか。
 南雲 「韓国クムホタイヤとは将来に向けたタイヤ関連技術の共同研究開発などを開始したばかりだ。今のところ資本云々について報告すべきものはない。ただ、オフテイク(一定量引取り)などは今後考えていきたい」

 ■売上高1兆円を掲げたが。
 南雲 「掲げたものの、簡単には右肩上がりとはいかず、17年の目標を下げた。しかし、方向性は間違いないので、中計GD100は17年で終わるが、今後の新たな中計の中で1兆円を目指したい」
 
 

横浜ゴムは世界的なタイヤ企業

 同日の記者会見でATG創業者のヨゲッシュ・マハンサリア氏は、横浜ゴムを選んだ理由を聞かれ、次のように答えた。

 「横浜ゴムは世界的なタイヤ企業であり、技術開発や素材研究のノウハウの集積があり、さらに品質管理能力にも優れている。新興市場にも強く、ATGが進出していない中国、ロシアでも高い実績をもつ。それらの要素が今後シナジー効果として期待できると考えたからだ」

 ■ATGの会社概要
 社名=Alliance Tire Group B.V.▽設立=2006年▽本社所在地=オランダ▽売上高(15年度)=5億2900万ドル(約635億円)▽営業利益(同)=9500万ドル(約114億円)▽従業員数=約4500人▽主要株主=KKR AT Dutch B.V.87.5%、Yogesh Agencies and Investments10.0%他▽事業内容=農機用・林業用・産業用・建機用タイヤの製造・販売▽生産拠点=3拠点(インド2拠点、イスラエル1拠点)▽展開ブランド=Alliance(アライアンス)、Galaxy(ギャラクシー)、Primex(プリメックス)

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