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東大、日本精工、ローム、東洋電機製造と共同で

ブリヂストン、走行中ワイヤレス給電IWMの開発進める

タイヤ 2019-10-16

 ブリヂストンは、東京大学大学院新領域創成科学研究科藤本研究室、日本精工、ローム、東洋電機製造と共同で、道路からインホイールモータ(IWM)に直接給電できる「第3世代走行中ワイヤレス給電IWM」の開発を進めている。10月10日、東京大学柏キャンパス(千葉県柏市)で、その技術説明会等が開催された。

受電コイルをホイール内に配置したモデル


 第3世代走行中ワイヤレス給電IWMは、道路に設置した送電コイルからばね下に配置した受電コイルに直接給電できるシステム。電気自動車(EV)への走行中給電が可能になるため、バッテリー搭載量が少なく済むことで軽量化、コストが安くなる、バッテリーの残量や充電時間の心配がなくなるなどのメリットに繋がる。

 現状、第3世代走行中ワイヤレス給電IWMには、2つの構造がある。いずれもEVの駆動装置であるモータ・インバータ、受電回路はホイール内に搭載するが、受電コイルの位置がホイールの内外で分かれる。受電コイルについても、ホイール内に搭載することを目指しており、そこにブリヂストンが持つ有機材料の知見やタイヤ開発技術が生きる。10日の技術説明会で、東京大学の藤本博志准教授は「受電コイルを内蔵するにあたって、タイヤの影響は非常に重要になる」と話す。

試験車に搭載したシステム。受電コイルはホイール外にある


 ホイール外に受電コイルを設置すると、送電コイルと受電コイルの間に空き缶などの金属異物が入る可能性がある。その場合、給電が十分に行えず、充電損失に繋がる。一方、受電コイルをホイール内に配置すれば金属異物が入ることを防げるが、タイヤの接地面剛性を担う部材であるスチールベルトにより、給電効率の悪化などエネルギーロスが起こる。

有機材料の知見、タイヤ開発の技術生かす

 ブリヂストンは給電を阻害しないタイヤの開発を進め、スチールベルトに替え、非金属である有機繊維のベルトを用いた。有機繊維ベルトは航空機タイヤやレーシングタイヤで実績があり、その知見が生きた。新たに開発した有機繊維ベルトを用いたタイヤは、スチールベルト比で強度が約50%向上することに加え、運動性能、摩耗ライフ、バネ等の性能は同等。質量は5%以上低減している。開発した有機繊維ベルト単体の試験においても、給電効率はスチールベルトに比べ7.7%向上することを確認した。技術説明会でブリヂストンの桑山勲次世代技術開発第一部主幹研究員は「無線給電に合うタイヤのパターン、サイズを今後さらに開発していく」と語った。

 ブリヂストンでは、2022年までにタイヤを含めた車両での評価を行い、25年に実証実験フェーズへの移行を目指す。

 また、走行中ワイヤレス給電IWMは、東京大学を中心に多くの企業が連携しオープンイノベーションを推進している。東京大学、ブリヂストン、日本精工、東洋電機製造は、走行中ワイヤレス給電IWMプロジェクトに関わる基本特許をオープン化することに合意。様々な企業が参画しやすいようにし、プロジェクトの知財運営委員会で承認された企業・団体が権利化された技術を無償で使用できる仕組みを整備する。これにより、現在の共同研究の枠組みに留まらず、オープンイノベーションによって研究開発を促進していく。

 なお、ブリヂストンは、10月25日から東京ビッグサイトで一般公開される「東京モーターショー2019」で、開発を進める、ホイール内に受電コイルを配置した第3世代走行中ワイヤレス給電IWMのモデルをブース展示する。

 近年、二酸化炭素排出量削減などを考慮した電気自動車(EV)の開発が急速に進展している。ただ、EVは充電に伴う利便性や大量にバッテリーを生産するための資源量といった課題が指摘されている。また、EVの航続距離を伸ばすにはバッテリー容量を増やす必要があるが、その分車重が重くなり、走行のために必要なエネルギーが増加する、車両コストが高くなるといった課題がある。そのため走行中給電のメリットは大きい。

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