天然ゴムの破壊メカニズムに関する研究成果を発表
住友ゴム工業、世界で初めてき裂先端の結晶化挙動を解明
タイヤ 2019-03-12
住友ゴム工業は3月12日、ライプニッツ高分子研究所(ドイツ・ドレスデン)との共同研究により、世界で初めて、天然ゴムのき裂先端の結晶化挙動(天然ゴムを伸ばした時に伸長方向に分子の並びが揃うこと)を明らかにしたと発表した。
同社ではすでに合成ゴム内部の「ボイド」と呼ばれる空隙(ゴム破壊の元)の発生からき裂発生までのメカニズムを解明しているが、今後の環境問題や性能持続の観点から、タイヤの主原料の一つである天然ゴムの破壊現象を解明することも重要なポイントと位置付けている。
天然ゴムは、伸ばすと結晶化することが知られており、結晶化部分は剛性が高くなる。そのため、SBR(タイヤで一般的に使われている合成ゴム)では発生しないこの結晶化は、天然ゴムのき裂成長や破断に強く影響すると考えられている。
タイヤは接地して回転している状態では、ひずみの拘束(ゴムが自由変形できない状態のこと)を受けた状態で周期的な変形を繰り返すため、ひずみの拘束下での天然ゴムのき裂先端の変形を観察することが求められる。
実験では、き裂先端の力とひずみの関係を再現し、かつX線での結晶構造の解析を可能にするために伸長方向に対して幅方向が十分に広い天然ゴムの平面試験片を用いて、伸縮を繰り返した場合のき裂先端(伸長方向に対して幅方向が広い天然ゴム平面試験片を用いることで、伸長した際の幅方向への収縮を抑制することができ、ひずみの拘束を受けたき裂先端の挙動を再現)について、X線広角散乱を用いてゴム内部の結晶化挙動を観察した。
その結果、短冊試験片を伸長した場合は天然ゴム分子のほとんどが伸長方向に揃い結晶化が発生するが、十分に広い天然ゴム平面試験片のき裂先端では、ひずみの拘束のために、分子の並びが短冊試験片ほど揃わず、結晶がランダムにいろいろな方向を向いていることが判明した。
さらに充填剤としてカーボンブラックを加えたゴム試験片では、カーボンブラックを混ぜていないゴムよりも結晶のサイズが小さくなることが分かった。
一方で、伸縮を繰り返す際の結晶化の状態を観察した結果、伸長時に生じた結晶化は試験片が元に戻る際に融解するが、伸長時よりも元に戻る時の方が結晶化度が高い結果となった。
同社では、研究成果を活かし、従来と比べて優れた耐摩耗性能を持つゴムの開発を進め、さらには「より性能が持続する」高性能タイヤの開発につなげていく方針。
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