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特集「防災に貢献するゴム企業」

住友ゴム工業、住宅用制振ダンパー「MIRAIE」

会員限定 ラバーインダストリー 2024-04-17

 元日に発生した能登半島地震。古い木造家屋が多い地域だったこともあり、多くの家屋が倒壊した。そんな地震から住人の命だけでなく、家の資産価値を守るのが、住友ゴム工業の住宅用制震ダンパー「MIRAIE(ミライエ)」。実際、能登半島地震では激震地域に建てられた住宅297棟に対し、実際に訪問し、住宅の被害状況を確認した結果、通行止めが続き立ち入り不可能な1棟を除き、296棟で倒壊・大きな損傷は見られなかった。命と財産を守るその性能の高さが改めて証明された。

屈指の硬さを備えた高減衰ゴムが地震の揺れを吸収

 住友ゴム工業のMIRAIEはA(エース)型の金属フレームの上部に、独自の高減衰ゴムを備えた住宅用制震ダンパー。金属フレームによって伝えられた地震の揺れ(運動エネルギー)を、高減衰ゴムが熱エネルギーに変換することで吸収する。発売開始は2012年3月。全国の施工棟数は約8万8,000棟で、戸建て住宅用制震ダンパーに占めるMIRAIEをはじめ同社製品(OEを除く)のシェアは30.0%以上と圧倒的だ。

 高減衰ゴムは、レーシングタイヤ開発を通じて培った配合技術や材料技術を応用展開したもので、タイヤメーカーである同社ならではのゴムだ。「世の中に高減衰ゴムは様々あるが、世界でもこれ以上硬い高減衰ゴムはないと言われるほど屈指の硬さを備えている。当社の高減衰ゴムの特徴で、特許も取得している。戸建て木造住宅の制震ダンパーには、家を元の位置に戻す力である復元力とエネルギーを吸収する力である減衰力の2つが求められる。それを兼ね備えているのがMIRAIEで、硬い高減衰ゴムがその性能を支えている。硬いことで高減衰ゴムの部分を小さくでき、設置基数も少なくて済む。性能だけでなく、コスト面でも優位性がある」(松本達治ハイブリッド事業本部副本部長)。

松本達治ハイブリッド事業本部副本部長


 一方の金属フレームは、高減衰ゴムに地震のエネルギーを効率良く伝える役割を担う。A型に行き着くまでには足掛け7年を要した。「V型やH型、K型など様々な形状のシステムを評価し試行錯誤した結果、A型に行き着いた。A型が、高減衰ゴムに地震エネルギーを最も効率良く伝えることができる」(同)。下部に向けて足を開いた形状のA型は、その足元を住宅基礎のコンクリートと緊結する構造で、この構造が地震の揺れを高減衰ゴムに効率良く伝える。「A型の構造でしかできないこと」(同)だという。

住宅に設置されている「MIRAIE(ミライエ)」。V型やH型など様々な形状での試行錯誤を経て、写真のようなA(エース)型にたどり着いた。


 A型の金属フレームによって伝えた地震エネルギーを、高減衰ゴムが熱エネルギーに変換することで建物全体の揺れを吸収する。揺れ幅は最大

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