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アクティブトレッド搭載でサマーとスタッドレスの性能両立

住友ゴム工業、次世代オールシーズンタイヤを発表

タイヤ 2024-07-24


 住友ゴム工業は7月22日、次世代オールシーズンタイヤDUNLOP(ダンロップ)「SYNCHRO WEATHER(シンクロウェザー)」を発表した。路面状態に合わせゴム自ら性質が変化する、同社の新技術「アクティブトレッド」を初搭載した。同技術搭載により、サマータイヤとスタッドレスタイヤの性能を両立。ドライ、ウエット、氷上、雪上などのあらゆる路面にシンクロする。同日開催された新商品発表会で、山本悟代表取締役社長は「従来のオールシーズンタイヤの後継品ではなく、次世代オールシーズンタイヤと位置づけ、全く異なる基軸を持った新ジャンルとして発売する。これは進化ではなく発明だ」と語った。10月1日から発売し、初期発売サイズは40サイズ。順次22インチまで合計100サイズ以上に拡大する。全サイズにメーカー希望小売価格を設定する。

SYNCHRO WEATHER


 新商品「シンクロウェザー」は、「アクティブトレッド」を採用することで、ゴムの柔らかさに寄与する因子の1つであるポリマーの動きをコントロール。スタンダードサマータイヤ以上の優れたウエット性能を実現するとともに、従来のオールシーズンタイヤではカバーできなかった氷上を含む、あらゆる路面での走行を可能にした。

 「アクティブトレッド」では、ゴムの中に路面状態の変化に反応する、「水スイッチ」、「温度スイッチ」という2つの「スイッチ」を組み込むことで、ポリマーの動きをコントロールした。

 水スイッチは、ポリマー間の強固な「共有結合」の一部を水で脱着可能な「イオン結合」に置き換えた。水に触れた時だけゴム表面が柔らかくなり、ウエット性能が高まる。また、再び乾燥するとポリマー同士が再結合。ゴムの剛性が復活し、スタンダードサマータイヤ同等の性能に戻る。ウエットブレーキ性能は、スタンダードスタッドレスタイヤ「WINTER MAXX 02」を大きく上回り、スタンダードサマータイヤ「ENASAVE EC204」よりも高い性能を発揮する。「水で結合が解け、乾燥すると再び結合するという可逆性を付与する点は最も苦労したが、今まで培ってきた技術や原材料メーカーの協力、シミュレーション技術を用いることでブレイクスルーした」(水野洋一執行役員・タイヤ事業本部材料開発本部長)。

 温度スイッチは、ポリマーから切り離しても機能する材料を新開発し、一部グリップ成分に置き換えることで実現した。常温ではスタンダードサマータイヤと同等の剛性を持ちながら、低温の氷上路面でもスタンダードスタッドレスタイヤ同等にゴムが柔らかくなり、グリップ力を発揮する。

 氷上ブレーキ性能は、「WINTER MAXX 02」と同等だ。また、高速道路冬用タイヤ規制でも走行可能な「スノーフレークマーク」に加え、国連規定で定められた氷上性能の基準をクリアしたタイヤを表す「アイスグリップシンボル」も刻印されている。同社調べによると、オールシーズンタイヤでのアイスグリップシンボルの刻印は世界初。「年間を通した使用においても、冬タイヤとしての性能は3シーズン以上は十分に対応できる」(田中進執行役員・タイヤ事業本部技術本部副本部長)。

 タイヤ表面のパターンデザインでは、最新のノイズシミュレーション技術を活用し、低ノイズと高い排水性・排雪性を両立させるV字溝設計を新開発。形状の異なる2種類のブロックをデザインし、周上の配列をランダムかつ最適な並び方にすることで、タイヤから発生する周波数をコントロールした。「ENASAVE EC204」同等の静粛性能を実現している。「タイヤが路面に接する部分から発生する空気振動をシミュレーションすることで、無数に考えられるブロック形状と溝の配置を最適化した」(同)。

 さらに、摩耗予測シミュレーションを活用し、溝の角度、深さ、タイヤ表面に刻まれる細かい溝であるサイプなどを最適化。接地面全体を均一にすることで摩耗量を少なくしている。耐摩耗性能は「ENASAVE EC204」同等以上。

 アクティブトレッドの採用により、サマータイヤとスタッドレスタイヤの性能を両立した。タイヤは、天候や路面状態に合わせゴムを専用設計しており、外部環境に合わせて履き替えることが一般的だが、シンクロウェザーはタイヤ自らが適した性能に変化する。ドライ、ウェット、氷上、雪上といったあらゆる路面にシンクロするため、夏も冬もより安心して使えるストレスフリーなことに加え、夏タイヤと冬タイヤの交換が不要で、環境面においても廃棄タイヤの数を削減し、環境負荷の軽減などが期待できる。

 販売に際しては、「ニーズに沿わない誤った販売を防ぐため、そして何よりこの商品を使って欲しい人にしっかりとシンクロウェザーの性能を知ってもらうため」(河瀬二朗執行役員・タイヤ事業本部国内リプレイス営業本部長兼ダンロップタイヤ代表取締役社長)として、販売店認定制度を採用する。勉強会に参加し、商品の知識や技術知識、ターゲット層を理解した上で、認定試験に合格した店舗のみが扱える。販売認定店は、ダンロップタイヤホームページで情報を随時更新していく。「しっかりと認定試験を受けてもらい、ユーザーに間違いのないように正しいタイヤを推奨してもらう。次世代オールシーズンタイヤは、これまでのタイヤと全く異なるタイヤであり、ユーザーに喜んでもらえるような売り方で、きちんと市場に浸透させていきたい。日本の夏タイヤをシンクロウェザーに変えていくことを目指す」(西口豪一代表取締役専務執行役員・タイヤ事業本部長)。

山本悟社長「進化ではなく発明」

あいさつする山本悟社長


 ダンロップブランドは136年という歴史の中で、国産第1号タイヤをはじめ、ハイドロプレーニング現象の解明や100%石油外天然資源タイヤなど様々な世界初や日本初の技術、商品を世に送り出してきた。人を思う心、誰かの役に立ちたいという優しさから生み出されたブランド「ダンロップ」。100年以上経った今も、私たちは変わらぬ思いで商品やサービスの開発を続けている。

 タイヤは水の上で滑り、氷の上でも滑るという常識を覆すため、水や氷を味方につけることはできないかと考え、試行錯誤を重ね生まれた技術がアクティブトレッドだ。

 シンクロウェザーは、あらゆる路面、あらゆる天候にタイヤが能動的にアジャストし、生活者の日常をより豊かにしていくことを願い、名付けた。

 シンクロウェザーは次世代オールシーズンタイヤと位置づけ、現在販売しているDUNLOP「ALL SEASON MAXX AS1(オールシーズンマックス エーエスワン)」の後継品ではない。全く異なる基軸を持った新ジャンルとして発売する。

 住友ゴム工業のパーパスは、「未来をひらくイノベーションで最高の安心とヨロコビをつくる。」だ。シンクロウェザーは、まさに未来をひらくイノベーション。数々の世界初を生み出してきたダンロップが、また一つ新たな価値を届ける。

 これは進化ではなく発明だ。このタイヤが、今後の自動車用タイヤの概念を大きく変えると信じている。このタイヤが普及することで、移動体験がより豊かに、安心、安全に過ごす人が増えることを願っており、楽しみにしている。
(次号以降に技術詳細、試走会の様子を掲載)

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