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製販技で体制を強化

住友ゴム工業、欧州でシェア5%目指し拡大はかる

タイヤ 2018-10-23

説明する黒田豊取締役常務執行役員

 
 住友ゴム工業は、欧州でタイヤ販売シェア拡大を図る。現状3%ほどのシェアを20-22年にかけ5%に拡大していく方針。10月上旬、欧州への製品供給を担うトルコ工場を報道陣に公開した際、同社の黒田豊取締役常務執行役員欧州・アフリカ本部長は「欧州でシェアを5%獲得できれば、存在価値がある」と語った。

 同社は18年度を初年度とした5カ年の中期経営計画で、最終年度にあたる2022年度に売上収益、事業利益に占める海外比率をそれぞれ7割以上に引き上げる計画だ。達成に向け、欧州も重要な位置を占める。

 欧州は、2015年10月のグッドイヤー社とのアライアンス契約解消に伴い、経営の自由度が増している。16年には、欧州・アフリカ本部(EAH)を発足。営業力強化や判断スピードの向上を図ってきた。また、15年にトルコ工場を稼働、17年には英国でタイヤ卸し、販売を行うミッチェルディーバー社の買収、ドイツで欧州テクニカルセンターを稼働するなど、製販技の体制強化を進めている。

 ファルケンブランドを中心に展開する欧州の販売は、着実に伸びている。欧州・アフリカ地域の2017年の販売本数は、欧州で販売会社「Falken Tyre Europe(FTE)」が営業を開始した10年比の3倍強に拡大。今後、域内のバリューサプライチェーン強化などにより、22年には17年比で約1.6倍の販売本数を目指す。そのうち、欧州は約半数を占める。

 欧州への製品供給基地として重要な役割を担うトルコ工場は、15年6月の生産開始以降、生産能力を着実に増やしてきた。18年の日産は1万6,000本。これは生産開始時の4倍にあたる。今後も増産を続ける方針で、20年には18年比で約2倍の同3万本体制とする予定だ。

 販売面では、ファルケンブランドを扱うディーラー、店舗を増やし販路を拡大するとともに、新車装着車種の拡大にも力を入れる。

 買収したミッチェルディーバーは約6,000以上の小売店、自動車整備工場などにタイヤ卸しを行うほか、タイヤ小売チェーン「PROTYRE」など100店以上の直営店を展開しているが、18年末にはその「PROTYRE」の店舗数を買収前の16年末比で約1.5倍に拡大する。併せてミッチェルディーバー社内での住友ゴム工業品の販売シェアを、22年には16年比で約4倍に高める。

 新車装着では日系OEに加え、ドイツOEへの納入が拡大している。ドイツOEでは、高級車種への採用も進んできた。「OEの装着率向上は拡販にも効果的」(同)として、フランス、イタリアのOEにもコンタクトを進めている。

 また、開発面では欧州テクニカルセンターを活かし、欧州・アフリカ市場のニーズに沿った商品開発体制の強化や欧州カーメーカーへのアプローチ強化、開発リードタイムの短縮、市場での競争力の向上、トルコ、南アフリカ工場との連携など、域内生産開発体制の強化を進めていく。
 

トルコ工場、20年に日産3万本体制へ

トルコ工場


 2013年10月に着工し、15年6月に生産を開始したトルコ工場は、チャンクル県ヤクンケント工業団地内に立地している。首都であるアンカラの北東80キロメートルに位置し、日系企業としては、トルコ中部アナトリア地域で初めての大規模工場だ。同工業団地の第1号案件でもある。敷地面積は100万平米と広大だ。

 資本金は4億米ドル。住友ゴム工業が80%、トルコでタイヤ流通も担っているAKO社が20%出資している。

 総投資額は約5億米ドル。生産開始時の日産は4,000本。それが現在は同1万6,000本。現時点の生産量(新ゴム量)は、同社グループ全12工場のうち9位、海外8工場のうち6位と、グループ内での規模としてはまだ決して大きくないが、投資は現在も継続している。原材料から成型、加硫、倉庫までが1ユニットとして構成され、現在は5ユニット。それが20年には8ユニット、同3万本に拡大する計画。

 13-19インチの乗用車用タイヤを生産し、欧州へ供給している。本数ベースでは、全体の85%を欧州を中心とした地域に、10%をトルコ国内の市販用に、残る5%をトヨタを中心としたトルコ国内の新車用に販売している。生産するタイヤの9割がファルケンブランド、1割がダンロップブランドだ。

トルコ工場内の成型工程(左)とローカバー


 ■生産設備に「太陽」を導入
 生産設備には、同社独自の最新生産方式「太陽」を導入。材料工程と成形工程を一体化させ、自動化・小型化することで、高精度と高性能を追求している。また、生産設備には同社グループ初の最新鋭設備も投入。同工場は、欧州向けの高性能なハイシリカタイヤの生産比率が高いため、シリカを高効率で精練できるミキサーを導入した。「欧州への高性能タイヤの供給基地として、今後も最新鋭の生産設備を入れていきたいと考えている。最終的にはフラッグシップ工場になるくらい、製造技術をリードして欲しい」(黒田豊取締役常務執行役員欧州・アフリカ本部長)という。生産品目ではウィンタータイヤの比率が高いが、最近ではオールシーズンタイヤの生産が増加。同タイヤの生産は今後も増加が見込まれている。

 工場で使用する材料については、アジア他から全体の65%を調達する。納期が長くなるものの、コストや性能面で有利な材料が多いという。トルコ国内からの調達は15%、欧州からの調達は20%。原材料メーカーの数、材料の種類が限られるトルコ国内からの調達はこれ以上望めないが、納期が2週間程度と短い欧州からの調達を増やすため、安価かつ要求性能を満たす材料の評価、導入を進めている。

水リサイクル設備


 ■排水リサイクルではモデル工場
 環境負荷低減も図っている。住友ゴム工業グループでは、世界的な水資源のひっ迫に対応するため、20年までに排水の100%リサイクル技術確立を目指しているが、同工場はそのモデル工場。RO膜(逆浸透膜)を利用した排水リサイクル設備を導入し、工業排水ゼロ、取水量50%減を目指している。18年末までにめどを立てる計画。

 安全教育にも注力している。17年10月に、安全教育の核となる安全体感棟をオープン。新人教育のほか、地域の高校生、大学生などを招き安全教育を行っている。

 トルコ工場は全員が年2回の安全教育を受ける。実際の現場と同様に作られた設備で、災害のリスクをシミュレーションする。シミュレーションの器具は24台あり、安全の知識、経験を積み重ねる。その結果、災害事故は年々減少している。

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