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乗用車用スタッドレスタイヤ

横浜ゴム、「iceGUARD6」の凄さとは② パターンとコンパウンド

タイヤ 2018-02-21


横浜ゴムが、昨年9月1日に発売した乗用車用スタッドレスタイヤの新製品「iceGUARD6」。同社が、ヨコハマ・スタッドレスタイヤの最高傑作とする「iceGUARD6」には、その性能を支える様々なテクノロジーが詰め込まれている。前号(2月12日付)では、冬用タイヤの違いをリポートしたが、今号では「iceGUARD6」の性能向上のカギとなったパターンとコンパウンドについてリポートする。

パターンエッジ24%、接地8%増加

横浜ゴムは「iceGUARD6」の開発に際し、氷上性能とウエット性能の向上に焦点を当てた。氷上性能は、ユーザーがスタッドレスタイヤに求める性能で1位。またウエット性能については、近年の温暖化やロードヒーティングによって冬季期間中のウエット路面が増加しているためだ。目標とした数値は、従来品である「iceGUARD5 PLUS」に比べ、氷上制動で15%、ウエット制動で5%の向上。新たなパターンとコンパウンドの開発により、数値のクリアを目指した。

氷上性能向上に向け、パターンでポイントとなったのが溝やサイプ(細かい切れ込み)といったエッジ効果と接地を確保することでの凝着摩擦力の強化。氷上制動向上にはエッジと接地を増やすことが、またウエット制動にはエッジを増やす必要があった。ただ、一般的に溝エッジを大きくすると接地が低下し、氷上制動が不足するという課題がある。そのため、エッジと接地を最適化し増やすことが求められた。

パターンに採用したのはイン側で氷上、アウト側で雪上性能に特化したこれまでの非対称パターンを継承しつつ、氷雪性能はもちろんのこと、ウエット性能も高めた専用パターン。イン側にはリブ基調の中に溝、サイプを配置することで接地させながらエッジを増加、主溝はジグザグにすることで溝エッジを増加させた。またセカンドブロックを大型化することで、接地面積を増やした。加えて、従来のトリプルピラミッドディンプルサイプに比べ折りを1つ増やした新開発のクワトロピラミッドディンプルサイプを採用し、ブロック剛性を向上させた。これら技術の採用で、従来品である「iceGUARD5 PLUS」に比べエッジを24%、接地を8%増やした。

「iceGUARD6」㊨と「iceGUARD5 PLUS」のトレッドパターン

コンパウンドには、新開発の「プレミアム吸水ゴム」を採用した。ゴムに配合した「新マイクロ吸水バルーン」の分散を均一化することで、氷上で滑る原因となる氷表面の水膜の吸水効果を向上。また従来のスタッドレスタイヤのコンパウンドにはないほど大量のシリカを配合し、しなやかさを増すことで路面への密着性を高め、氷上性能とウエット性能のレベルアップを実現した。

氷上、ウエット性能の両立に大きく寄与しているシリカは、ゴムに配合する補強材の一つ。同じくゴムの補強材に使用されるカーボンブラックと比較すると、一般的にゴム中のシリカの比率を高めるとウエット性能と転がり抵抗を同時に改善することができる。また、ゴム中で網目鎖構造をとるカーボンブラックと異なり、ゴム中では凝集塊が点在する形となるため、シリカを配合したゴムはしなやかさが増す。一方、親水性であるため、親油性(疎水性)であるゴムとは混ざりにくく、凝集しやすい。大量のシリカをゴム中に均一に分散させることは容易ではなく、シリカの分散性をいかに高めるかが、ゴムのしなやかさを向上させるポイントとなった。

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