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連載「つたえること・つたわるもの」(75)

気の達人・西野皓三先生、躍動する〈身体知〉、〈気育〉のことば。

連載 2019-10-08

出版ジャーナリスト 原山建郎

 今月末、西野流呼吸法の創始者、西野皓三先生の誕生会に出席する。私より20歳年上で、現在も稽古場で弟子を指導しながら、現役バリバリで93歳を迎える。30年ほど前、まだ雑誌記者だった時代、西野流呼吸法の取材がきっかけで西野塾に入門した。その後、呼吸法の稽古に通ったり休んだりを繰り返していたが、ここ数年は稽古を休んでいたので、久しぶりにお目にかかるのが楽しみである。

 稽古の合い間に、ときどき「気(生命エネルギー)」の話をされるので、それを聞くのも楽しみで稽古に通った。また、弟子(塾生)である私がピンチに陥ったときに、あとで考えると納得できるのだが、最初は戸惑う不思議なアドバイスを受けた。私に大きなパワーを与えてくれた、気の達人・西野先生の〈ことば〉のいくつかを、私の記憶をたどりながらレポートしてみたい。あるいは一字一句、発言通りではないかもしれないが、これらは私の〈からだ〉と〈こころ〉に届いた、西野先生の〈ことば〉たちである。

★「からだが楽しくない」
 不登校や引きこもり児童への一般的な対応では、学校でのいじめなど心理的な原因をさぐり、それを解決するために、スクールカウンセラー(臨床心理士)による「心理的」なアドバイスが行われることが多い。つまり、不登校や引きこもりの第一原因がその子の心にあるという心身医学的なアプローチである。

 しかし、西野先生は「それは、からだが楽しくないから、学校に行きたくない。だから、からだが楽しくなれば、放っておいても学校に行きたくなる」と言う。これは心理分析などによって心の原因をさぐろうとする頭脳知(ブレイン・ワーク)に頼るのではなく、本来のからだに備わっている智慧=身体知(フィジカル・インテリジェンス)を全開にするためのエクササイズ(呼吸法)によって、「からだが変わると、こころも変わる」という〈からだ〉から〈こころ〉への身心医学的なアプローチだといえるだろう。

 不登校や引きこもりの子どもは、たいてい呼吸が浅く、内側に閉じられた「く」の姿勢をとっている。呼吸法の実習によって、ゆったり快い呼吸ができるようになると、いつしか外側に開かれた「あ」の姿勢に変わってくる。やまとことば(和語)の〈たのし〉に漢字をあてると〈手(た)伸(の)し〉となる。

 西野先生が言う「西野流呼吸法は、気育によって、気のエネルギーを育てる最高のメソッド」とは、〈からだ〉のファンダメンタルズ(身体知の活性)を高める、無理のないエクササイズという意味である。

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