【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、米中対立の激化を警戒
連載 2025-10-20
マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
OSE天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=315.00円で上げ一服となり、310円を挟んで売買が交錯する展開となった。10月4日の自民党総裁選後は高市早苗氏が勝利したことを手掛かりに急激な円安圧力が発生し、円建てゴム相場は直近安値295.80円から大きく切り返していた。しかし、公明党が自公連立政権からの離脱を表明すると、いわゆる「高市トレード」の株高・円安は一服し、ゴム相場は調整売り優勢の展開になった。また、米中対立に対する懸念が蒸し返されていることもネガティブ。

上海ゴム先物相場は、1トン=1万4,000元台後半まで値下がりした。国慶節明け後も需要不安を織り込む動きが優勢になり、1万5,000元の節目を割り込んでいる。
10月中旬は、改めて米中対立激化のリスクを織り込む動きが優勢になった。10月末には韓国で開催されるアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議に合わせて米中首脳会談を開催し、両国間の緊張緩和を更に進めるような協議・合意が期待されていた。しかし、中国がレアアースや生産技術の輸出規制を強化すると、トランプ米大統領は首脳会談が開催されない可能性を示唆するなど、先行き不透明感が強くなっている。トランプ大統領は11月1日から、中国に対して100%の追加関税を課すことも表明している。
10月14日からは、米中両国が相互に船舶の港湾使用料の徴収を始めた。これにより米中間の貿易はダメージを受け、サプライチェーンの混乱も懸念されている。また、中国は同じく14日、韓国造船大手の米国子会社に対する制裁を発表。米国による中国海運・造船業界への通商法301条に基づく調査への対抗措置だとして、追加の報復措置を講じる可能性も示唆している。
米中首脳会談前の駆け引きの一種とも言えるが、仮に首脳会談の開催が見送られ、更に米中両国が改めて関税の応酬を迫られるような事態になると、ゴム需要に対する影響も避けられない。原油や非鉄金属相場などの素材市況は全体的に値を崩しており、株価も不安定化している。月末に向けて米中両国が対話と対決のどちらの方向に向かうのかが焦点になる。
産地では雨がちな天候が続いているが、ゴム相場は供給リスクのプレミアムを加算するような動きは見送っている。生産・流通に対する深刻な脅威とは評価されていない。OSEゴム先物相場も、期近限月は逆にディスカウントされる順サヤ(期近安・期先高)が形成されている。
為替は10月10日に1ドル=153.27円までの円安・ドル高になったが、その後は151円水準まで軟化している。円安要因の値上がりは一服した。
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