【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、生産国主導の底入れは失敗
連載 2017-06-30
TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、6月8日の1キロ=185.00円をボトムに16日の216.00円まで急反発していたが、その後は再び200円台割れまで反落している。
急激な価格低下を受けて産地で売り渋りの兆候がみられ、タイ政府もこの問題に取り組む姿勢を示す中、短期筋のショートカバー(買い戻し)主導で自律反発局面を迎えていた。しかし、結果的には効果が期待できる市況対策は打ち出されず、改めて上値の重さが認識される状況になっている。
6月17-18日に、タイ、インドネシア、マレーシアの3カ国は協議を行った。そこでの協議内容については公表が行われていないが、インドネシアゴム協会の会長は協議後に、最近の天然ゴム価格急落について「問題ない」との認識を示している。
タイ政府は現状に強い危機感を示しているが、インドネシアはファンダメンタルズに基づかない投機的な値下りとみている模様であり、市況への介入の必要性を認めなかった。少なくとも、現行の価格水準では国際協調による天然ゴム価格の押し上げが実現する可能性は低いとみて良いだろう。
相対的にコストラインの高いタイでは、ゴム農家に対する補助金交付が決まっている。USS現物価格が1キロ=60バーツを割り込む中、市況対策の必要性を認めた格好になる。ただ補助金交付については、価格低下に伴う需給リバランスの動きを阻害する要因になるため、市況対策としての有効性を認めることはできない。
タイ政府は70バーツまでゴム相場を押し上げる必要性を訴えているが、政府による直接買い上げ、最低価格の設定としたより強力な市況対策が打ち出されない限り、政策主導で天然ゴム相場が本格的に上昇するのは困難だろう。
産地集荷量は6月入りと前後して急激な落ち込みを見せていたが、その後は逆に今季最高を更新する動きになっている。産地気象環境にも特段のトラブルは報告されておらず、このまま季節要因を反映した集荷増が続くと、ゴム相場は改めて下値切り下げのリスクが高まる。
生産国でゴム相場の急落に対する危機感が高まり始めているのは間違いないが、生産国が許容できる安値限界ラインを打診する形で水準を切り下げる展開が続く見通し。
なお、6月26日には東京ゴム6月限が納会を迎えるが、190円台での平穏納会が予想される。1カ月前の5月限は納会直前に323.00円まで急伸していたが、その後は横浜地区などへの入庫が報告されており、納会値としては今年最安値が更新されるのがほぼ確実な状況になっている。
(マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅 努)
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