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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、急伸一服後のボックス相場

連載 2025-05-26

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=310~330円水準で売買が交錯した。米中関税引き下げ合意を受けての買いが一巡し、持高調整が中心の展開になった。株高・円安環境が一服したことが、ゴム相場の上値も圧迫している。ただし、大きく値を崩すまでの勢いはなく、上げ一服後は方向性を打ち出せない展開になった。

 中国がRSS備蓄を計画しているとの噂で急伸する場面もみられたが、一時的な値動きに留まっている。

 上海ゴム先物相場は、1トン=1万4,000元台後半をコアにやや上値の重い展開になった。米中関税引き下げ合意でも1万5,000元台前半までの小幅高が精一杯であり、その後は世界的な株高一服と連動して上値の重さを再確認している。

 4月の中国経済指標で、中国経済の減速傾向が再確認されたことはネガティブ。固定資産投資が前年同月比4.0%増(前月は4.2%増)、鉱工業生産が同6.1%増(同7.7%増)、小売売上高が同5.1%増(同5.9%増)となっている。4月は米中両国が大幅な関税引き上げに踏み切ったが、中国経済活動の停滞に直結したことが確認できる。中国国家統計局は、「外部からの衝撃による影響が増大した」と解説しており、米国向け輸出の鈍化が、製造業や個人消費など幅広い分野に影響を及ぼしている模様だ。

 中国政府の2025年の経済成長目標は「5%」とされており、景気対策への期待感が下値を支えているが、高いレベルの先行き不透明感がゴム相場の上値を圧迫した。

 4月下旬から5月中旬にかけては、通商環境の改善期待を背景とした株高・円安圧力が、ゴム相場を大きく押し上げていた。しかし、日経平均株価が改めて上値を抑えられる一方、ドル/円相場は5月12日の1ドル=148.64円をピークに22日には142.78円まで、最大で6円近い円高・ドル安になっている。為替要因のみでも値下がりしやすい環境だったが、逆にゴム相場を大きく売り込んでいくような動きまではみられなかった。

 産地相場はじり安傾向になっている。タイ中央ゴム市場(ソンクラ地区)のRSS現物相場は、5月7日の1キロ=72.91バーツを戻り高値に、21日時点では68.55バーツまで下落している。東南アジアの一部では豪雨も報告されているが、季節的には減産期から生産期への移行が促され始めており、季節的な供給制約が緩和しつつあることはネガティブ。ただし、産地情勢を手掛かりに積極的に売買を進めるような動きはみられなかった。ラテックスは逆に底固さをみせている。

 JPXゴム相場のサヤも安定せず、気迷いムードの強さが目立った。

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