【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、急落は一服も低迷が続く
連載 2025-03-24
マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=340円台をコアに揉み合う展開になった。通商リスクの高まりを背景に、3月11日には325.30円まで下落。しかし、その後は下げ一服感が広がり、安値圏で売買が交錯する展開になった。為替が円安に振れたことはポジティブ。
上海ゴム先物相場は、1トン=1万6,000元台後半で小幅安になった。上値の重さを維持して2月5日以来の安値を更新したが、全体的に値動きは鈍かった。
中国国務院は3月16日、国民の所得押し上げによる消費回復に向けた措置を講じると発表した。賃金の妥当な伸びを促進するほか、最低賃金の調整など、国民所得の押し上げを通じて、消費の下支えを目指す。具体的な内容は明らかにされなかったが、パンデミック終息後も低迷が続く消費刺激に、政府が本腰を入れ始めるとの期待感が浮上したことはポジティブ。
中国の2月経済指標は、固定資産投資が前年同月比4.1%増(前月は3.2%増)、小売売上高が同4.0%増(同3.7%)、鉱工業生産が同5.9%増(同6.2%増)となった。全体として、中国経済の減速懸念を高めるような内容にならなかったことはポジティブだが、ゴム相場を大きく押し上げるには至らなかった。
通商リスク織り込みの急落は一服した格好だが、トランプ米政権は4月2日に相互関税を発動する方針を再確認している。対象国、関税の内容など、情報が乏しいだけに、引き続き高いレベルの先行き不透明感がゴム相場の上値を圧迫した。
非鉄金属や原油相場などの急落が一服していることで、ゴム相場も下げ一服となっている。ただし、上値を買い進むことには慎重姿勢が維持され、結果的に安値圏で方向性を欠く展開に留まった。
産地は減産期のピークを迎えている。例年3~4月が減産期のピークとあって、供給制約は強い。ただし、産地相場も明確な方向性を打ち出せていない。
タイ中央ゴム市場(ソンクラ地区)のRSS現物相場は、3月19日時点で前週比1.6%高の1キロ=72.71バーツとなった。しかし、これは消費地相場の急落傾向にブレーキが掛かった影響が大きく、おおむね2月の価格レンジを踏襲する展開に留まっている。実際に産地相場主導でJPXゴム先物相場の当限を大きく押し上げていくような動きは確認されていない。減産期の下値サポートは機能しているが、需要不安を相殺して、産地主導でゴム相場全体の値位置を切り上げるような展開は見送られている。
JPXゴム先物相場のサヤも、当限が最も安い340円台になっている一方、期中に向けてはおおむねフラット状態になった。
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