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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、春節連休も3カ月ぶり高値

連載 2025-02-03

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=370円台後半で下値を支えられた後、380円台後半まで切り返す展開になった。上海ゴム市場が春節(旧正月)の連休入りしたことで薄商いの持ち高調整が中心だったが、押し目での物色意欲は強く、2024年10月23日以来の高値を更新した。

 上海ゴム先物相場は1トン=1万7,000元台前半で春節入りした。今年は1月28日~2月4日までが春節の連休になるが、春節入り前に積極的な売買が行われないまま、連休に突入した。春節前の在庫手当ての強化、春節中の工場稼働率低下などを手掛かりとした売買は見送られた。

 トランプ米大統領は、中国で違法薬物の原料が製造されていることなどを理由に、中国からの輸入品に10%の関税を課す考えを示している。2月1日開始が検討されているが、上海ゴム相場の連休入りもあって、米中通商リスクを積極的に織り込んでいくような動きはみられなかった。実際に関税が開始されるか否かによって、春節の連休明け後のマーケット環境は大きく変わる可能性もあるが、1月のゴム相場に対する影響は限定的だった。

 中国の1月製造業PMIは前月の50.1から49.1まで大きく下振れした。4カ月ぶりに活動拡大・縮小の分岐点である50を割り込んだ。トランプ米政権誕生前の駆け込み需要が一服した影響などが指摘されている。ただし、中国の景気減速懸念を織り込んでいくような動きも見送られた。

 中国DeepSeek社の最新人工知能(AI)モデルに対する脅威から1月27日には世界の半導体関連などのハイテク株が急落した。リスクオフ化で広範囲にわたる資源価格が下落したが、ゴム相場は一時的に380円台を割り込む展開に留まった。その後は本格的な株安環境への移行が回避されたこともあり、株価主導の大きな値動きもみられなかった。

 タイ中央ゴム市場(ソンクラ地区)のRSS現物相場は、1月29日時点で前週比2.0%高の1キロ=74.99バーツ。産地では局地的な豪雨が報告されているが、供給リスクのプレミアム加算は見送られている。例年だとウインタリング(落葉期)による減産圧力を織り込み始める時期だが、今年はもっぱら消費地相場の値動きが重視されている。

 1月27日にRSS先物相場1月限が受渡日を迎えたが、受渡価格は390.00円となった。2024年12月限の379.90円を10.10円上回り、10月限以来の高値になっている。産地気象環境の改善よりも、中国景気刺激策への期待感が重視され、期近限月の底固さが再確認される結果になった。ただし、期近から期中のサヤはほぼフラット化した。

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