【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、中国景気リスクで急反落
連載 2024-11-18
マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=379.90円まで切り返した後、340円台中盤まで反落する展開になった。8月23日以来の安値を更新している。中国景気対策への「期待」が「失望」に転換したことで、上海ゴム相場主導の軟調地合になっている。
上海ゴム先物相場は1トン=1万8,730元まで切り返した後、1万7,000元台後半まで急反落する展開になった。
中国全国人民代表大会(全人代)常務委員会終了後の11月8日に財政出動を伴う景気対策が打ち出されるとの期待感を背景に押し目買いが膨らんでいた。しかし、実際には新たな発表は行われなかった。景気対策そのものが否定された訳ではないが、米大統領選でトランプ元大統領が勝利したこともあり、様子見が選択された。
このため中国経済の先行き不透明感が急激に強まり、ゴム相場以外にも銅相場が約2カ月ぶりの安値を更新するなど、素材市況全体の上値が圧迫されている。
トランプ氏は、中国からの輸入品に対して60%の関税を課す方針を示している。この措置が実行に移されれば、米中間で貿易戦争が勃発するのは必至であり、中国のタイヤ需要環境にも大きなダメージが生じる可能性がある。
2017~2021年の前政権時は、関税カードを背景に中国に対してより多くの米国製品・サービスの購入圧力を強める交渉を行っただけに、トランプ氏の本気度は分からない。ただし、仮に対中関税カードが発動された場合には、米中のみならず世界経済にも大きな影響が生じる可能性があり、緊張感が高まっている。
タイ中央ゴム市場(ソンクラ地区)のRSS現物相場は、11月14日時点で前週比2.9%安の1キロ=71.08バーツ。上海ゴム相場の軟化を受けて、産地相場も値下がりしている。上海ゴム相場と同様に産地相場も安値修正の動きを見せていたが、上海ゴム相場が反落するとそれと連動する形で値下がりしている。
産地では依然として豪雨や台風などの報告が続いているが、改めて供給リスクを織り込んでいくような動きは見られない。8~9月で天候リスクはピークを過ぎたとの評価が維持されている。
一方、為替市場では円安・ドル高傾向が維持されている。トランプ米次期政権の誕生を見据えて、米金利上昇圧力が強くなっている影響が大きい。トランプ政権誕生後はインフレや政府債務膨張が加速するとの見方が強くなっている。1ドル=155円の節目も突破し、7月23日以来の円安環境になっていることは、円建てゴム相場にポジティブ。ただし、円安要因でゴム相場を押し上げるには至らなかった。
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