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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、上海主導で2カ月ぶり高値

連載 2024-08-26

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=340円水準まで値上がりし、6月14日以来の高値を更新した。上海ゴム相場が年初来高値を更新したことで、国内相場も買い優勢の展開になった。中国経済の減速に対して根強い警戒感があるものの、産地相場が底固さを維持していることもポジティブ。為替は大きく円高に振れ、原油相場は急落しているが、ゴム相場は戻り高値を更新している。

 上海ゴム先物相場は1トン=1万6,000元台前半まで値上がりしている。7月に続いて8月に発表された中国経済指標は、中国経済の急減速を強く示唆するものが目立つ。このため原油相場は需要不安を織り込む動きが優勢だが、ゴムや非鉄金属市場では中国政府の景気対策期待を織り込む動きもみられ、産業用素材市況全体のトレンドが定まらなかった。ただし、いずれにしても上海ゴム相場は連日の年初来高値更新となり、投機色の強さも指摘されているが、国際ゴム相場全体を押し上げる要因になっている。

 中国共産党はすでに個人消費分野を中心とした景気対策を打ち出す方針を示しているが、10月の国慶節に向けてなんらかの景気対策が打ち出されるとの観測は強い。中国系メディアでは商品券の直接給付案なども報じられている。中国のタイヤ需要を押し上げるような消費刺激策への期待感も上海ゴム相場を押し上げた一因とみられる。

 タイ中央ゴム市場(ソンクラ地区)のRSS現物相場は、8月22日時点で前週比4.2%高の1キロ=79.09バーツとなった。8月中旬は乱高下する不安定な値動きもみられたが、最終的には上昇トレンドが維持されている。タイ北部やラオスでは引き続き豪雨が報告されており、洪水や鉄砲水の被害も続いている。ゴムの生産・流通環境に対しては依然として懸念の声が強く、産地相場の堅調地合も、消費地相場を下支えしている。

 ただし、JPXゴム相場は逆サヤ(期近高・期先安)が解消され、サヤはほぼフラット状態になっている。供給不安の織り込みでは、通常だと当限にプレミアムが加算される傾向が強いが、今回は期先限月主導の上昇になっており、投機色の強さも目立つ価格形成が行われている。国内在庫は減少傾向が続いており、JPX発表の8月10日時点の生ゴム指定倉庫在庫は4,202トンと4月から半減しているが、あまり材料視されていない。

 為替相場は不安定な動きが続いている。8月15日には1ドル=149.39円に達したが、21日には145円を一時割り込んでいる。このため、為替要因だと円建てゴム相場は値下がりしやすい環境にあったが、円高よりも上海や産地相場高の方が重視され、底固さを維持した。

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