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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、円高と需要不安でじり安

連載 2024-08-05

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=310円台前半まで値下がりし、5月15日以来となる2カ月半ぶりの安値を更新した。需要不安と供給不安の綱引きが続いていることで大きな値動きには発展しなかったが、為替が大きく円高に振れたことで、円建てゴム相場は値下がり傾向を維持した。

 上海ゴム先物相場は1トン=1万4,000元台前半で上値の重い展開。根強い需要不安を背景に一時1万4,000元の節目も割り込み、4月26日以来の安値を更新している。

 中国経済の減速懸念は強い。7月の製造業PMIは、国家統計局発表で前月の49.5に対して49.4、S&P発表でも前月の51.8に対して49.8になっている。ともに活動の拡大・縮小の分岐点である50を下回っており、製造業の停滞状態を確認している。

 中国共産党は中央政治局会議において、経済への政策支援を強化すると発表した。新華社通信は、内需拡大のために消費の刺激に重点を置くと報じている。仮に自動車販売分野で強力な政策支援が導入されると、タイヤ需要も刺激される可能性がある。しかし、具体的な内容が伝わっていないため、ゴム相場の反応は限定された。非鉄金属や鉄鉱石相場なども上値の重さが目立ち、中国の資源需要環境に対する不信感の強さがうかがえる状況にある。

 一方、タイ中央ゴム市場(ソンクラ地区)のRSS現物相場は、8月1日時点で前週比3.8%高の1キロ=73.88バーツとなった。産地では引き続き豪雨が報告されており、供給不安が維持されている。タイ気象庁からも、洪水や鉄砲水のリスクに対して注意喚起が行われている。モンスーンによる気象環境の悪化傾向が続いており、供給リスクのプレミアム加算が約1カ月にわたって続いている。

 需要不安と供給不安の綱引きが続いているため、ゴム相場は明確な方向性を打ち出せていない。産地相場高と消費地相場安の共存が続いているが、JPXゴム相場の値動きは鈍かった。

 こうした中、為替が大きく円高に振れたことが円建てゴム相場の上値圧迫要因になった。1ドル=152~155円水準での保ち合いを経て、8月1日時点では一時148.48円まで円高・ドル安が進行している。

 7月30~31日に開催された日本銀行金融政策会合では、政策金利を従来の0~0.1%程度から0.25%程度に引き上げた。また植田和男総裁は、足元の金利水準は非常に低いとした上で、「引き続き金利を引き上げていく考えだ」と発言している。従来は景気への配慮もあって利上げには慎重姿勢だったが、突然の積極姿勢への転換が、円相場の急伸を促している。為替要因でも上値を圧迫された。

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