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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、上値重いが小動きに留まる

連載 2022-08-29

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は、1キロ=220円台中盤から後半で揉み合う展開になった。中国経済の減速懸念から上海ゴム相場はやや上値の重い展開になったが、為替が円安に振れたこともあり、円建てゴム相場の値動きは鈍かった。売買高も低迷しており、狭いレンジ内でのボックス相場に終始した。

 上海ゴム先物相場は、1トン=1万2,000元台中盤から後半でやや上値の重い展開になった。大きく値を崩すには至っていないが、1万3,000元割れ定着が進んでいる。

 中国経済の減速懸念は強い。注目度の高い経済指標の発表はなかったが、長江流域の干ばつの影響で水力発電の操業トラブルが発生し、電力供給障害が経済活動にブレーキを掛けていることが嫌気された。自動車・同部品メーカーの工場についても操業停止の報告があり、タイヤ向けゴム需要に対する直接的な影響も警戒された。

 更に新型コロナウイルスの感染被害も続いており、北京市に隣接する河北省の一部で8月23日からロックダウン(都市封鎖)が講じられた。大きな規模ではないが、北京に感染被害が広がるリスクから、強硬な対策が行われている。中国全土の新規感染者数が急増している訳ではないが、改めて主要都市でロックダウンが行われるリスクも警戒されている。

 中国人民銀行(中央銀行)は8月22日、今年3回目となる利下げに踏み切った。景気減速懸念が強まる中、1年物に加えて住宅ローン金利の目安になる5年超の金利も引き下げている。ただ、マーケットでは利下げよりも大規模な財政出動を求める声が強く、上海ゴム相場の上値の重さに変化はみられなかった。

 タイ中央ゴム市場の現物相場は、8月25日時点でUSSが前週比1.3%安の1キロ=48.28バーツ、RSSが同0.1%高の50.34バーツ。安値圏で明確な方向性を打ち出せなかった。価格低迷でも集荷量は安定しており、売り渋りなど産地が安値を拒否するような動きは見られない。ただ、50バーツ水準は生産コストとの関係性を巡る議論が必要なレベルの安値圏であり、上値は重いものの下げ渋る中途半端な値動きになった。消費地相場の値動きが全般的に鈍かった影響もあろう。

 JPXゴムの1番限と6番限のサヤは概ねフラット化している。国内在庫は8月入りした後も取り崩しが続いているが、逆サヤ(期近高・期先安)環境は概ね解消されている。ただ、一気に順サヤ定着から更に順サヤを拡大していくような動きまではみられず、サヤの動きも小動きに終始した。

 原油高や円安が進行したことはポジティブだが、週を通じて値動きの鈍さが目立った。

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