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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、景気減速懸念の圧迫続く

連載 2022-07-18

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は、1キロ=240円台前半まで下落する展開になった。改めて世界経済の減速懸念を織り込む動きが強まり、5月16日以来の安値を更新している。

 インフレ対策で各国が急激な利上げ対応を進める中、実体経済の減速傾向が強まるとの見方が優勢になっている。しかも、中国では改めて新型コロナウイルスの新規感染者数が増加に転じており、一部都市で行動規制強化の動きが報告されていることが警戒された。

 上海ゴム先物相場は、1トン=1万2,000元水準まで下落し、年初来安値を更新している。1万2,000元台後半で揉み合う展開になっていたが、原油や非鉄金属、鉄鉱石相場などが値を崩す中、ゴム相場も売り優勢の展開になっている。

 コモディティ市場全体が上値を圧迫されている。7月5日に続いて12日も原油相場などがパニック的な急落地合を形成している。何かサプライズ的な材料が浮上している訳ではないが、景気悪化による資源需要環境の悪化リスクが織り込まれている。

 しかも、中国では新型コロナの変異株「BA.5」の感染拡大が報告されており、このまま感染被害が拡大し続けると、その先には大規模ロックダウン(都市封鎖)の再開があるのではないかとの警戒感がゴム相場の上値を抑えている。中国の6月貿易収支では、輸出が前年同月比18%増と、経済活動の正常化が進んでいることが強く示唆されている。ただ、足元の良好な経済環境よりも、将来の景気鈍化リスクの織り込みが優先されている。

 一方、JPXゴム先物相場は当限と中心限月で値動きが大きく異なっている。中心限月である12月限は需要不安を織り込む形で軟化しているが、当限である7月限は250円台中盤から後半で底固く推移している。国内は低在庫環境が当限をサポートする展開が維持されている。JPX発表の生ゴム指定倉庫在庫は、4月30日時点の6,516トンに対して、直近の6月30日時点では4,536トンまで、2カ月で30.4%減少している。

 この結果、当先の逆サヤ(期近高・期先安)は6月末時点の3.20円から7月14日時点では16.70円まで一気に拡大しているが、当限主導でゴム相場全体の値位置を切り上げるまでの勢いはみられなかった。

 タイ中央ゴム市場の集荷環境には特に目立った問題はみられなかった。日本の気象庁は、秋までラニーニャ現象が続く可能性を指摘している。

 為替市場では一時1ドル=139円台まで、24年ぶりの円安が進行しているが、需要不安による値下がり圧力を若干緩和する程度のインパクトに留まっている。

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