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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、投機色の強い乱高下に

連載 2021-11-01

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は、RSSが1キロ=225~240円水準で乱高下する展開になっている。10月21日には一時240.70円まで急伸し、6月28日以来の高値を更新した。しかし、その後は10月25日の224.30円まで急反落した後、230円台まで切り返す荒れた展開になっている。

 上海ゴム先物相場も、10月21日の1トン=1万5,985元まで急伸した後、25日の1万4,170元まで急反落したが、その後は再び1万4,000元台後半まで切り返すなど、極端に不安定な値動きになっている。1万4,000元台前半では押し目買いが入るも、改めて相場を大きく押し上げることには慎重ムードもあり、方向性が定まっていない。

 瞬間的な乱高下が繰り返されていることからも明らかなように、最近の値動きはゴム需給環境の評価に基づくものではない。極めて投機色の強い相場展開であり、短期的にはこのまま高ボラティリティの不安定な地合が続く可能性がある。

 原油相場は高値更新が続いていたが、短期的な過熱感から調整売りを進める動きも目立ち始めている。また、中国政府が石炭市場に介入していることで、石炭相場の急落と連動して非鉄金属相場も調整色を強めている。電力供給不足による非鉄金属の供給を巡る混乱が緩和されるとの期待感が浮上している。ただ、ゴム相場は他コモディティ価格との連動性もみられず、分かりづらい値動きが繰り返されている。

 東南アジアではベトナムやカンボジアなどで豪雨が報告されており、農作業への影響も指摘されている。ただ、タイ中央ゴム市場の集荷量は安定しており、供給リスクの織り込みを進めるような動きは鈍い。現物相場は、10月28日時点でUSSが前週比0.8%上昇の1キロ=53.59バーツ、RSSが同2.1%上昇の57.56バーツとなっている。産地主導の価格形成は見送られており、もっぱら消費地相場の値動きを見ながらの展開になっている。

 10月28日時点では、1番限と6番限は13.60円の順サヤ(期近安・期先高)になっており、期近限月に対してプレミアム加算を進めていくような動きは鈍い。一時期と比較すると順サヤは鎮静化し始めており、ゴム相場が急落対応を迫られる必要性は薄れている。ただ、短期需給にひっ迫感が強いとは言い難い状況が続いている。

 需要サイドでは、新車用タイヤ市場は依然として厳しい状況が続いている。ただ、半導体供給の混乱はピークを脱したとの見方も強くなっており、需要リスクを織り込む動きに関しては、一服感も目立つ状況になっている。タイヤメーカーの決算発表などが新たな手掛かりを提供するかが注目される。

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