【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、コロナ警戒で上値重い
連載 2021-07-12
マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
JPX天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが1キロ=215~225円水準で揉み合う展開になった。週前半は上海ゴム相場が安値からの切り返しを見せたことが好感され、2日の安値214.80円から一時225.00円まで切り返した。しかし、その後は国内で新型コロナウイルスの感染が拡大し、政府が東京都などに4度目の「緊急事態宣言」を発出するとの方針が伝わったことで、戻りを売られる展開になった。結果的に年初来安値圏で揉み合う展開になっている。
上海ゴム先物相場は、前週の1トン=1万2,000元台後半から1万3,000元台前半まで切り返し、5月31日以来の高値を更新している。1、2週間程度でトレンドが入れ替わる投機色の強い不安定な地合が続いているが、改めて1万3,000元台を回復したことはポジティブ。鉄鉱石や非鉄金属相場も底固さを見せており、産業用素材市況全体が横ばいからじり高の展開になったことが、上海ゴム相場をサポートしている。
本来であればJPXゴム相場も上海ゴム相場連動で230円水準を試すような堅調地合が支持される余地もあったが、国内のパンデミックを受けて投資家マインドの悪化が進むなか、日経平均株価と同様に上値の重い展開になった。久しぶりに、上海ゴム相場とJPXゴム相場で異なる値動きを見せており、今月はオリンピックに向けて新型コロナの感染被害がどの程度の広がりを見せるのかにも注意が必要な状況になっている。
これから夏季休暇シーズンに向かうことになるが、昨年と同様に今年も行楽需要は抑制されやすく、国内経済の減速懸念がゴム相場の地合悪化を促すリスクを抱えた状態になっている。
一方、タイ中央ゴム市場の集荷量は安定している。東南アジアでは新型コロナの変異株の感染被害が猛威を奮っており、各国が行動規制の強化に踏み切っている。農業部門でも労働力不足を指摘する声が再び強くなっているほか、流通面への影響も警戒される。ただ、現時点では具体的な生産、供給障害は報告されておらず、逆に集荷量の増加傾向も見受けられる状況にある。
現物相場は、7月8日時点でUSSが前週比1.5%安の1キロ=51.63バーツ、RSSが同0.3%安の53.00バーツ。上海ゴム相場の堅調地合が下値を支える場面もみられたが、安定した集荷環境やJPXゴム相場の上値の重さが、産地相場も圧迫する場面が目立った。
石油輸出国機構(OPEC)プラスの政策調整を巡る協議が決裂したことで、原油相場が急伸後に急反落する荒れた展開になっているが、ゴム相場に対する影響は限定的だった。
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