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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、産地主導の上昇地合に

連載 2020-08-03

(マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努)
 JPX天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが1キロ=160円台中盤まで値上がりする展開になった。期近限月の急伸地合が続く中、出遅れ感のあった期先限月に対しても買いが膨らみ、6月8日以来の高値を更新している。

 上海ゴム先物相場も、1トン=1万元中盤での保ち合い相場から上放れし、一時は1万1,000元の節目を突破し、3月5日以来の高値を更新している。

 ゴム相場の上昇をけん引しているのは、産地相場高だ。タイ中央ゴム市場の現物相場は、7月30日時点でUSSが前週比0.8%高の1キロ=42.89バーツ、RSSが同2.2%高の45.39バーツとなっている。RSSは4~5月にかけて40バーツ台を割り込む場面もみられたが、2月に中国で新型コロナウイルスの感染被害が広がり急落した以前の価格水準に回帰しつつある。産地相場が急伸し、それが消費地相場の期近限月を押し上げ、さらに期先限月も押し上げ始めているのが現状で、供給不安型の上昇地合になっている。

 東南アジアでは干ばつ傾向が警戒される状況が続いていたが、7月はマレーシアとインドネシアを中心に豪雨が観測され、農産物の供給不安からパーム油相場などと同様に天然ゴム相場も急伸した。足元では気象環境が徐々に改善に向かっているため、供給不安が解消に向かうとの見方も強く、パーム油相場は利食い売りで軟化している。しかし、天然ゴム相場はなお底固く推移しており、供給不安の織り込みがいつまで続くのかが焦点になる。

 7月27日には7月限が納会を迎えたが、受渡価格は159.00円となり、6月限の135.10円から23.90円値上がりした。受渡価格の前月比での上昇は2月限以来であり、ゴム相場の実勢が改善していることが確認できる。

 需要環境の評価は割れている。タイヤ販売環境は底を打った可能性が高いとみられるが、新型コロナウイルスの第2波が世界各地で観測される中、短期的な経済活動の停滞を報告する声も目立つ状況にある。製造業部門の活動は安定しているが、個人消費関連の指標に悪化傾向が目立ち、自動車やタイヤ販売環境への影響が警戒される。

 また、米中対立が激化していることも今後の経済環境に対する先行き不透明感を高めている。投資家のリスク選好性が大きく損なわれている訳ではないが、通商環境の不確実性が増していることには注意したい。

 世界的に株価が総じて底固く推移していることはゴム相場を下支えするが、為替市場では円高が進んでいることが上値を圧迫している。

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