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連載コラム「白耳義通信」41

「ファン・エイク年」

連載 2020-02-17

鍵盤楽器奏者 末次 克史

 2月に入り大きな嵐が二度もやって来ているベルギーです。強風により巨木が倒れ家を直撃したり道路を塞いだりと、大きな被害が出ています。これも地球温暖化のせいでしょうか。

 さて今年は15世紀前半に活躍した画家ファン・エイク(van Eyck)年に当たります。兄ヒューベルト(Hubert)、弟ヤン(Jan)が共同で描いた作品「神秘の子羊」(Het Lam Gods)はベルギーの7大秘宝の一つでもあり、つとに有名です。二人はベルギーの首都ブリュッセルより東へ120km。マース(Maas)川を挟み対岸はオランダというマーセイク(Maaseik)出身と言われています。

 特に弟のヤン・ファン・エイクはブルゴーニュ(現在はワインで有名なフランスの地方)公国フィリップ善良公(Philippe le Bon)の宮廷画家でもあり、ベルギーの古都ブルージュ(Brugge)で活動しました。

 「神秘の子羊」は、過去「行くべき世界の10都市」にも選ばれたことのあるゲント(Gent)の聖バーフ大聖堂(Sint-Baafskathedraal)に置かれています。1432年に完成したこの作品ですが、600年の間に上塗りされており、元の姿に戻すべく目下修復作業が行われているところです。完全修復には後数年ほど掛かる見込みと言われていますが、主題ともなっている「神秘の子羊」が描かれている中央パネルがオリジナルの状態で復元され、先月大聖堂へ戻ってきたばかりです。

 この子羊ですが、オリジナルは16世紀から人々が見てきた「動物の姿をした羊」ではなく、まるで「人間のような羊」で本来描かれていたことが分かりました。他のパネルはここまで変わっていないので何故上塗りされたのか非常に興味深いところです。人間のような姿をした羊が気持ち悪かったのか、それとも神に対する冒涜とでも捉えられたのでしょうか。そしてファン・エイクは羊に何を見たのか、何を表現したかったのでしょうか。

 ベルギーフランダース政府観光局はファン・エイク年に非常に力を入れており、ゲント美術館(MSK)で行われる「ヤン・ファン・エイク:視覚の革命」展(Van Eyck – Een optische revolutie)開幕に合わせブリュッセル国際空港に於いてベルギーを訪れる観光客に「神秘の子羊クッション」を配布しました。

 新型コロナウイルスの動向が気になるところではありますが、是非ベルギーへ訪れてご覧頂きたい絵画の一つです。

【プロフィール】
 末次 克史(すえつぐ かつふみ)

 山口県出身、ベルギー在住。武蔵野音楽大学器楽部ピアノ科卒業後、ベルギーへ渡る。王立モンス音楽院で、チェンバロと室内楽を学ぶ。在学中からベルギーはもとよりヨーロッパ各地、日本に於いてチェンバリスト、通奏低音奏者として活動。現在はピアニストとしても演奏活動の他、後進の指導に当たっている。ベルギー・フランダース政府観光局公認ガイドでもある。

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