【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、過熱感強まるも上昇続く
連載 2019-11-18
マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが1キロ=180円台まで値上がりする展開になった。米中通商協議の評価が揺れ動く中、金融市場は全般的に明確な方向性を打ち出せない展開になった。しかし、東京ゴム相場は前週の上昇地合を引き継ぎ、7月29日以来の高値を更新している。
米中通商協議は合意文書署名に向けて詰めの協議が行われているが、強弱の情報が錯綜している。11月7日には中国商務省が段階的な関税撤廃で合意したと発表したが、翌8日にトランプ米大統領はこうした合意の存在を否定している。11月12日のトランプ大統領の演説では、「第一段階」の合意が間もなく成立する可能性があると報告されたが、具体的な内容や合意文書署名の日程などの詳細については言及がなかった。
通商合意は11-12月中に成立可能との見方が強いが、両国の意見対立も報じられており、マーケット全体としてはリスクオン環境が一服したものの、リスクオフ化には至らない中途半端さが目立った。
このため、原油や非鉄金属などの産業用素材市況は総じて上げ一服となっているが、ゴム相場のみが上値追いの展開を維持している。何かゴム相場独自の買い材料が浮上している訳ではないが、特に東京ゴム相場の期先限月で投機筋の物色意欲が強くなっている。6月中旬から10月初めにかけて、ほぼ一貫して戻り売り優勢の展開が続き、最大で53.60円の急落地合が形成されていた反動もあり、安値修正の動きが活発化している。
当限は160円台前半で上値を抑えられているが、期先は連日のように戻り高値を更新しており、投機色の強さが否めない状況になっている。
実際に上海ゴム先物相場は、1トン=1万2,000元の節目を挟んで明確な方向性を打ち出せていない。底固いものの、戻り高値更新は見送られており、東京ゴム先物の期先とは地合の違いが顕著になっている。
一方、タイ中央ゴム市場の集荷環境に目立った動きは見られない。最近のゴム相場高の要因として「ペスタロチオプシス」感染被害への警戒感も指摘されているが、現物市場の値動きは鈍い。現物相場は11月14日時点でUSSが前週比1.3%高の1キロ=38.71バーツ、RSSが同1.1%高の40.20バーツ。産地相場は週に1-2円程度の値上がりしか支持していない。
高値更新サイクルが続いており、180円台にも乗せたことで、次は7月25日の188.90円がターゲットになる。ただ、1カ月にわたる急伸相場で過熱感は極めて強くなっており、米中通商協議の動向などによっては、急反落するリスクも同時に高まっている。
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