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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、年初来安値を更新

連載 2019-10-07



マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努

 TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが1キロ=150円台中盤まで下落した。国慶節で上海ゴム相場は連休入りしたが、産地相場の値下がり傾向が続いていることが嫌気されている。中国に加えて米国の景気減速懸念が強くなっていることもネガティブであり、東京ゴム相場は年初来安値を更新する展開になった。

 タイ中央ゴム市場の現物相場は、10月3日時点でUSSが前週比8.3%安の1キロ=36.37バーツ、RSSが同7.3%安の37.72バーツと急落している。

 USSは8月以降、40バーツの節目水準で揉み合う展開が続いていたが、9月末を前に値崩れを起こし、連日の年初来安値更新になっている。RSSも40バーツの節目でのサポートに失敗し、完全な値崩れ状態に陥っている。

 新規で天然ゴム需給に関するネガティブ材料が浮上している訳ではない。集荷量は特別に大きな変動は見せておらず、気象環境にも大きな変化はみられない。インドネシアやマレーシアの乾燥懸念が後退していることはネガティブだが、ゴム相場の急落を促す程に供給環境が大きく変わっている訳ではない。

 ただ、9月から10月に移行する過程において、コモディティ市場では中国経済の減速懸念を織り込む動きが強まり、銅や原油など景気との連動性が強いコモディティ価格が軒並み下落している。10月入りしてからは、そこに米経済の減速懸念も加わり、株安・円高圧力が強くなっていることも、ゴム相場を大きく下押ししている。

 10月10-11日には閣僚級の米中通商協議が予定されており、そこでの協議の結果によっては米中関係のみならず、世界経済見通しも大きな修正を迫られる可能性がある。しかし、こうしたイベントリスクを無視した形でゴム相場の値下り傾向が続いている。

 東京ゴム先物市場では逆サヤ(期近高・期先安)傾向が強くなっており、当限は150円の節目も割り込んでいる。明らかに産地主導の値下り圧力であり、産地相場がどの水準までの値下りを許容できるのかが問われている。

 40バーツ割れは産地でコスト割れの議論を活発化させ易く、過去にタイ、インドネシア、マレーシアなどが輸出規制といった政策介入を決定した当時の値位置も下回っている。ただ、現時点では生産国に価格防衛へ向けての明確な動きを確認することはできず、下げ過ぎが警戒されながらも値下がり傾向が続いている。

 2010年代に入ってからの東京ゴム相場は150円の節目水準でサポートされ続けているが、同水準を防衛できるのかが改めて問われる局面になっている。

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