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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、産地主導で3カ月ぶり安値

連載 2019-07-08


マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努

 TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが1キロ=180円台前半、TSRが150円台前半まで、それぞれ下落した。産地供給不安の後退を背景とした売り圧力が継続し、RSSは4月2日以来となる約3カ月ぶりの安値を更新している。

 6月中旬以降は、期先限月が下落しても当限が下げ渋る展開が続いていたが、7月入りした後はようやく当限でも売り圧力が強まり、6月6日以来の安値を更新している。ただ、当先の逆サヤ(期近高・期先安)は40円を大きく超えた状態になり、引き続き期近限月と期先限月との間で地合の違いが目立つ。

 一方、上海ゴム先物相場は明確なダウントレンドを形成している。1トン=1万1,000元台前半と、3月29日以来の安値を更新している。

 6月29日の米中首脳会談では通商協議の再開、米国の対中追加関税発動の見送りといったポジティブな動きも報告されている。ただ、マーケットでは早期の通商合意は難しく、世界経済の減速リスクには何ら変化が生じていないとの慎重な評価が優勢であり、上海ゴム相場の反発を促すことに失敗している。

 国際ゴム相場の値下がり傾向の背景だが、前週と同様に産地相場の値下がり傾向になる。タイ中央ゴム市場ではUSS、RSSともに集荷量の増加傾向が続いており、エルニーニョ現象による供給不安が着実に解消方向に向かっている。RSSに関しては3週連続で今季最高の集荷量が報告されている。

 現物相場は、USSが4日時点で前週比6.5%安の1キロ=52.80バーツ、RSSが3日時点で同2.0%安の57.00バーツとなっている。
 産地では、引き続きインドネシアのスマトラやジャワといった地域で降水量不足が報告されているが、タイ、ラオス、カンボジアなどでは逆に豪雨が観測されており、全体としては安定した土壌水分環境にある。パーム油など他の農産物生産にも適した気象環境が報告されている。

 タイ、インドネシア、マレーシアの3カ国は、6月27日に会合を行い、輸出規制の高いコンプライアンスがゴム価格を支援したと報告している。ただ、具体的な輸出規制の実施状況については明らかにされなかった。また、インドネシアでペスタロチオプシス属菌の感染が広がり、マレーシアでも被害が確認され始めていることが報告されている。今後の供給リスクとして注意したい。

 現在は、供給不安を背景とした産地相場高が、実際の供給増加を受けて修正される局面になっている。ただ、東京ゴム期近限月ではまだ高値を維持したいとのエネルギーが残されており、期近限月の値崩れの有無が注目されている。

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