【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、通商リスク警戒も底堅い
連載 2018-12-10
マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが1キロ=160円台中盤まで切り返し、TSRは一時150円台を回復した後140円台中盤まで軟化する展開になった。
11月30日-12月1日に20カ国・地域(G20)首脳会合が開催されたが、12月1日の米中首脳会談では追加関税発動を90日間は見送る貿易戦争の一時「休戦」で合意したことが、月初のゴム相場を押し上げた。しかし、その後は米中通商協議の難航が警戒される地合に変わる中、改めて上値を抑えられている。12月3日の取引でRSSは10月23日以来の高値を更新したが、世界的な株価急落と円高を受けて、その後は上げ一服となっている。
一方、上海ゴム相場は1トン=1万1,000元台を回復したが、1万1,000元台前半からは伸び悩む展開になっている。
世界経済、資源需要環境において米中貿易戦争がこのまま続くのか、それとも収束に向かうのかは重大な関心事であり、それはゴム相場も例外ではない。このため、米中首脳会談が極めて大きなイベントとして注目されていたが、追加関税発動を見送り、通商協議に移行することで合意したことは素直に評価できる。
一方で、トランプ米大統領は交渉が不調に終われば追加関税を課す方針を示しており、しかも交渉責任者は対中強硬派のライトハイザー米通商代表部(USTR)代表が指名されたことで、貿易戦争解消は困難との見方に急激に傾斜している。
その結果として、12月の世界の株式相場は急落し、こうしたリスクオフ型のマーケット環境がゴム相場の上値も圧迫している。
ただ、ゴム相場に関しては株価の急落と比較すると、一定の底固さもみられる中途半端な状態にある。特に目立った買い材料などが浮上している訳ではないが、年末が近づく中、これまで大きく売り込んできた投機筋のポジション調整のニーズが高まっている模様だ。
一般的に12月のゴム相場は下げ渋る傾向にあり、昨年もこの時期のゴム相場は9-11月の急落相場に対する修正高になった。過去10年を振り返ってみても、12月は年間で最も高い確率(70%)で上昇している月になる。年明け後の減産シーズン入りも見据え、生産サイクルの季節要因から安値修正の動きが強まり易い時期になる。通商リスクを背景に改めて売り込むのか、それとも季節要因から安値修正が更に進むのかが問われる局面になる。
なお、タイ中央ゴム市場の現物相場は、12月6日時点でUSSが前週比1.0%高の1キロ=38.04バーツ、RSSが同0.5%高の40.11バーツとなっている。概ね最近のレンジ内の動きであり、年初来安値圏での保ち合い相場が続いている。
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