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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、円安と上海安の綱引き

連載 2018-05-07


マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅 努

 TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、1㎏=180円台中盤から後半で揉み合う展開になった。急激な円安圧力が円建てゴム相場の下値を支えるも、上海ゴム相場が上値の重い展開になる中、明確な方向性を打ち出せなかった。大型連休入りを控えていることもあり、持ち高調整中心の値動きが目立った。

 米国ではインフレ見通しの改善を背景に長期金利が急伸しており、これに伴い為替市場ではドル高・円安圧力が発生している。1週間で2円程度のハイペースな円安は、当然に円建てゴム相場に対しては押し上げ要因として機能する。

 ただ、その一方で上海ゴム相場が軟化したことが、こうした円安効果を相殺してしまっている。上海期貨交易所の天然ゴム先物相場は、1トン=1万1,000元台後半から中盤までじり安の展開になっている。

 前週は米国の対露経済制裁を受けてロシアからの資源供給に対する懸念が広がる中、アルミやニッケルなどの非鉄金属相場の急伸が、中国素材市況にも波及する形で、上海ゴム相場を押し上げていた。しかし、その後は米国が対露制裁の先送りを決定したことで非鉄金属相場が急反落し、上海ゴム相場も若干ながら反落している。

 産地では乾季型の気象環境が続いており、タイ中央ゴム市場の集荷量も抑制された状態にある。典型的な減産期型の供給環境であり、産地現物相場は底固く推移している。タイ産RSSの場合だと、前週の1㎏=48バーツ台から50バーツの節目を突破する展開になっている。

 このため、産地に比べて東京や上海ゴム相場の値位置に対しては割安感もある。ただ、4月23日の東京ゴム相場の4月限納会値が178.70円となるなど、特に当限主導で相場水準を切り上げていくような動きは見られなかった。

 3月限の納会値167.0円からは相場水準を切り上げているが、これは米中貿易戦争のリスクが軽減されたことに伴うものであり、減産シーズンのピークを迎えながらも期近主導で価格水準切り上げを打診するような動きは報告されていない。

 世界銀行は、昨年に続いて今年も世界の天然ゴム需給は供給過剰状態になるとの見通しを示している。年間平均価格は昨年の1㎏=205セントから186セントまで9.3%下落するとの見通しになる。昨年10月時点では緩やかな価格回復見通しが示されていたが、供給過剰状態の解消が遅れる中、慎重な価格見通しに修正が行われている。生産国の介入が行われても、タイなどの増産を前提にすると供給過剰状態が予想され、価格反発は難しいとのロジックになる。

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