連載コラム「白耳義通信」⑰
「日本に帰って戸惑うこと」
連載 2018-02-14
鍵盤楽器奏者 末次 克史
今年の新年はベルギーで迎えたが、親の面倒を見るために暫く日本へ滞在している。たまに日本に帰って来ると、ベルギーとの違いが浮き彫りになるので、今月はその辺りをお伝えしたい。
先ず皮膚感覚でいうと、水が大きく違う。ベルギーは硬質、日本は軟質の水。例えば髪を洗った時の泡立ちが非常に良いのが日本。ベルギーへ住みだした当初、日本でずっと使用していたシャンプーを持って行っていたが、それでも泡立たないので結局現地で売っているものに変えた。
また飲み物も少し違う。紅茶好きの母の為にベルギーで良く見るメーカーの紅茶を今回買って帰った。ベルギーで飲むとアールグレイの香りが立つのだが、同じ紅茶でも日本ではそうならない。これも水質の違いが大きく関係していると思う。結局、口に入れるものや体に使うものは、気候風土に有ったものが一番ということなのだろう。
後は横断歩道を渡る時。日本では「右見て、左見て、右見て」と小学校の交通教室で言われたものだが、ベルギーで最初に右を見ても車は来ない。車は左ハンドル、右側通行なので「左右左」と見ないと危険な思いをする。ベルギーで最初戸惑ったが、今は日本へ帰ると反対に怖い思いをする。またセンターラインの無い道を歩いていると、車がどちらを走って来るのか分からなくなることがある。
他にはガスの火。特に今自分が住んでいるベルギーの街は火力が弱いようで、ガスコンロで湯を沸かす際、結構時間が掛かる。パスタを作る時などは大変だ。だが日本で同じような感覚でいると、あっという間に湧いてしまう。水が無くなってしまう勢いだ。
ただベルギーの電圧は 220V なので、電気ケトルでは直ぐお湯が沸くし、炊飯器も15分あればご飯が炊けてしまう。日本では電気でお湯を沸かすにも、ご飯を炊くにも時間が掛かるのが違うところだ。しかしこの時期の日本はストーブという便利なものがあるので、やかんを置いておけば直ぐお湯が沸くし、加湿もしてくれるのが凄い。
帰る度に戸惑ってしまうこれらの違いも、時差ボケが治る一週間位で慣れてくるのも面白い。人間の適応力というのは良くできている。
【プロフィール】
末次 克史(すえつぐ かつふみ)
山口県出身、ベルギー在住。武蔵野音楽大学器楽部ピアノ科卒業後、ベルギーへ渡る。王立モンス音楽院で、チェンバロと室内楽を学ぶ。在学中からベルギーはもとよりヨーロッパ各地、日本に於いてチェンバリスト、通奏低音奏者として活動。現在はピアニストとしても演奏活動の他、後進の指導に当たっている。ベルギー・フランダース政府観光局公認ガイドでもある。
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