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【特別寄稿】国際航業

「診ま森GLOBAL」で持続可能な原材料調達の可視化とリスク管理を

ラバーインダストリー New! 2026-07-10

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 近年、グローバルなサプライチェーンにおいて、原材料調達が森林破壊や生物多様性の損失に加担しているリスクは、企業経営における看過できない重要課題となっている。特に、タイヤや自動車部品の主原料である天然ゴムの調達において、森林破壊や生物多様性の損失への関与を厳しく問われるようになっている。特に欧州の森林破壊防止規則(EUDR)などの規制により、企業には「そのゴムがどこで、どのように作られたか」という明確な証明が求められている。
 しかし、ゴムのサプライチェーンは極めて複雑である。無数の小規模農家から収集業者が買い集め、加工工場へと運ばれる過程で、原材料の「出自」を完全に追跡することは、従来の書類ベースの管理では限界に達している。

 こうした課題に対し、国際航業は、衛星画像と高度な地理空間解析技術(GIS)を活用し、原材料調達先に潜む環境リスクを客観的データに基づいて可視化・モニタリングするサービス「診ま森(みまもり)GLOBAL」を展開している。本稿では、同サービスの技術的概要と、製紙業界における活用事例、および今後の展望について解説する。

製品・技術の概要と特徴

 本サービスのアプローチを一言で表すならば、地球規模で行う「森の健康診断」だ。 広大なサプライチェーンを人海戦術で調査するのではなく、まずは衛星データという客観的な視点で全体を俯瞰し、リスクの高そうな場所を効率的にスクリーニング(選別)する。これを可能にしているのが、「衛星画像解析」と「GIS(地理情報システム)」という2つの技術だ。

なぜ衛星画像なのか

 衛星画像解析とは、いわば地球の表面を撮る「レントゲン」や「MRI」のようなものだ。人工衛星は、人間の目に見える光だけでなく、赤外線などの目に見えない波長の光も観測している。 植物は種類や健康状態によって反射する光の波長が微妙に異なるため、画像上では同じ緑色に見える森であっても、人工衛星ではそれが天然の原生林なのか、人工的に植えられたゴム林なのか、パーム農園なのかといった違いを識別することができる。

 さらに、過去数十年にわたるデータを蓄積しているため、「現在は森だが、10年前はどうだったか?」という時間の経過に伴う変化(病歴)も追跡できる(図1)。
「診ま森(みまもり)GLOBAL」では、こうした人工衛星の特長がリスク評価に活かされている。

図1 衛星画像から見える森林減少の例

GISによる情報の統合

 GIS(Geographic Information System)とは、デジタル地図の上に様々な情報をレイヤー(透明な層)のように重ね合わせ、位置関係を分析する技術だ。 「診ま森 GLOBAL」では、衛星で見つけた「森林の変化」の地図の上に、「国立公園の範囲」や「絶滅危惧種の生息域」といった地図を重ね合わせることで、「この森林伐採は、守るべき保護区の中で起きているか?」といったリスクの意味付けを行っている(図2)。

図2 GISとは?
本図はGISのイメージを補完するためにAIが生成したものです。

具体的な4つのステップ

同サービスでは、これらの技術を組み込み、以下の4ステップでリスク評価を行う。

STEP1:調達先マッピング
 サプライヤーから得られる情報の精度にはばらつきがある。例えば、農園の位置情報(ポリゴンデータ)が得られないケースもある。そういった場合にも、同サービスでは把握可能な工場(搾油工場やチップ工場等)の位置情報を地図上にプロットする。その上で、原材料の鮮度保持期限や現地のインフラ状況(道路網など)を考慮し、現実的な「調達可能範囲」を科学的に推定する。そして、その範囲内の農地を衛星画像解析により抽出し、リスク評価の対象とする。図3にSTEP1の作業フローを示す。

図3 STEP1の作業フロー


STEP2:現況把握
 推定された調達エリアに対し、衛星データを用いて「守るべき自然」が現在どれほど存在するかを把握する。具体的には、原生林の分布、High Carbon Stock Forest(高炭素蓄積林)、法的に保護されたエリア、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストに関わる主要生物多様性地域(KBA)などのデータを、STEP1の地図に重ね合わせる。

STEP3:リスク評価
 リスクの所在を明確にするため、「リスク発生の可能性」と「影響の大きさ」という2軸で評価を行う。過去の衛星データから蓄積された森林減少や火災発生状況を「発生可能性」とし、保護地域や泥炭地の有無を「影響の大きさ」とする(図4)。
 これらを掛け合わせ、リスクレベルを「重大リスク」「高リスク」「中リスク」「低リスク」等に客観的にランク付けする。これにより、企業は優先的に対策を講じるべき「ホットスポット」を即座に特定することが可能となる(図5)。

図4 STEP3 リスク評価


図5 リスク評価結果のイメージ


 特定されたリスクエリアに対し、定期的な衛星モニタリングを実施する。新たな森林伐採や火災の発生を継続的に監視することで、サプライチェーンの断絶リスクに早期に対応するとともに、サプライヤーとのエンゲージメント(対話・改善指導)の基礎データとして活用する。

開発の動機と技術的ポイント

開発の背景:情報の「不完全性」への対応
 本サービス開発の背景には、サプライチェーンの不透明さという実務の壁がある。理想的には全ての原材料について農園単位でのトレーサビリティが確保されるべきだが、現実は多段階の流通経路や小規模生産者の存在により、正確な位置情報の入手は困難を極める。
 本サービスの技術的なポイントは、この「不完全な情報」を補完する独自アルゴリズムにある。前述の通り、工場位置を起点にインフラ条件等を加味して調達圏を推定するロジックにより、農園情報が欠落している場合でも、蓋然性の高いリスク評価を可能にした。

客観的データの重要性

 従来のリスク管理はサプライヤーによる自己申告や認証に依存する傾向があったが、これだけでは「持続可能性」の根拠として不十分とみられるケースが増えている。本技術は、衛星画像という改ざん不可能な「客観的データ」を用いることで、評価の信頼性を担保している。

今後の展望と課題

 今後の展望として、評価対象リスクの拡大と技術の高度化を計画している。
 第一に、森林リスクに加え「水リスク」への対応である。製紙業は水を多用する産業であり、これはゴム業界を含む様々な産業にも該当する。今後、流域の水資源枯渇や水質汚染リスクの評価機能を実装することで、より包括的なサステナビリティ支援を目指す。
 第二に、AI(人工知能)による解析精度の向上である。AIを活用することで、衛星画像からの土地被覆分類や変化抽出の精度・速度を飛躍的に高め、リアルタイムに近いモニタリング体制の構築を進める。

おわりに

 「診ま森 GLOBAL」は、企業が「責任ある調達」を宣言で終わらせず、実行に移すための具体的な検証手段を提供するものだ。衛星データという科学的根拠に基づく透明性の高い情報開示は、グリーン市場における企業のブランド価値を向上させ、持続可能な社会の実現に寄与する。国際航業は、「情報をつなげる力」で、今後も製紙業界をはじめとするサプライチェーンの強靭化を支援していく方針だ。
 なお、本サービスの一連の取り組みは、持続可能な調達の普及・深化への貢献が評価され、「第26回グリーン購入大賞(GPN大賞)」において大賞を受賞したことを付記する。

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