【特集】農業に貢献するゴム企業
ブリヂストン、日本の農業を足元からタイヤで支える
ラバーインダストリー 2025-05-30
(2週間限定で全文無料公開)
国内農業は従事者の減少,高齢化,生産コストの上昇など様々な課題や困りごとを抱えている。ブリヂストンは,使命に掲げる「最高の品質で社会に貢献」や企業コミットメント「ブリヂストンE8コミットメント」の中の「Efficiency モビリティを支え,オペレーションの生産性を最大化することにコミットする」(生産の最大化),「Extension 人とモノの移動を止めず,さらにその革新を支えていくことにコミットする」(稼働を止めないこと),「Economy モビリティとオペレーションの経済価値を最大化することにコミットする」(トータルコストの削減)に則り,農業機械(農機)用タイヤを通じて,課題や困りごとの解決に繋がる取り組みを進めている。
種類が豊富な農機用タイヤ
農機用タイヤの種類は豊富だ。同タイヤが装着される農機の大きさや用途が異なるためで,例えば稲作用の農機と畑作用の農機ではタイヤの形状や大きさ,構造も異なる。農機用タイヤには,農機それぞれに適した性能が求められる。
農機用タイヤの構造はラジアルとバイアスに分かれる。昨今の乗用車用タイヤではみられなくなったバイアス構造も,農機用タイヤでは多くみられる。装着される農機の大きさ,用途が異なるため,ラジアル構造だけでなく,バイアス構造が適した部分はまだまだある。高馬力や大型の農機にはラジアルタイヤが,水田で用いるような比較的中小型の農機にはバイアスタイヤが装着される傾向にある。
農機用タイヤは乗用車用タイヤなどと同様に,主に摩耗によって交換する。農地間の移動や使用により,ラグと呼ばれるトレッド面のブロックが擦り減ると,スリップするなど求める性能が出なくなることに加え,スリップにより燃費も悪化するためだ。農家やコントラクター(農家から農産物の収穫や耕起等の農作業の請負等を行う組織)といったエンドユーザーは,ブリヂストンの場合,ブリヂストンの直営ショップや契約代理店でタイヤ交換を行う。適期作業が求められるコントラクターにとって,その時期を前に交換する場合もある。
農機用タイヤに求められる性能の変化
農業人口の減少や高齢化は,国内の農業にとって大きな課題で,その対応策の一つとして,農地の大規模化,集約化が進められている。それら地域では,大型の農機を用いてより効率良く作業を行うため,大型農機に適したラジアルタイヤが求められる。
農業の大規模化の進展とともに,近年はラジアルタイヤの需要が伸びてきている。構造上,バイアスタイヤに比べ接地面積が広いラジアルタイヤは,農機のトラクション(牽引力)を地面に効率良く伝えることができ,耐摩耗性能や耐荷重性能もバイアスタイヤ対比で向上する。
また,接地面積が広いため,土を踏み固めにくいという特徴もある。ブリヂストンBSJP AGタイヤ事業部AGタイヤ直需課の藤田智洋課長は「昨今は農機の大型化に伴いラジアルタイヤの性能を求めていく流れがあり,当社としても新商品の投入等によって,農家やコントラクターの困りごと解決に繋がる提案を進めている」と話す。

ブリヂストンBSJP AGタイヤ事業部AGタイヤ直需課 藤田智洋課長
ブリヂストンの農機用タイヤの強み
ブリヂストンの農機用タイヤの強みの一つが,長年にわたって積み上げてきたユーザーとの信頼や販売店網だ。「国内の農機メーカーとも長年取り引きがあり,需要に対し安定供給を続けてきた。また,補修用に関しても幅広い販売店網を有し,農家やコントラクターをしっかりとサポートしている。当社の農機用タイヤには幅広いラインアップがあり,様々な農機,用途,ユーザーに使用して頂いている。引き続き,特に需要が伸びている大型農機市場への対応を強化していきたい」 (藤田氏)。
新商品「VX-TRACTOR」
ラジアルタイヤで注力する新商品が,トラクター用の「VX-TRACTOR」。ラグの体積がアップしたことに加え,新配合のトレッドゴムを採用したことでラグが減りにくく,摩耗ライフが長い。「農家やコントラクターには様々な困りごとがあり,そのうちの一つが様々な生産コストの上昇。良いタイヤを使いたいが,一方でトータルコストも重要視するニーズに応えた商品で耐摩耗性が高く,長持ちする」(同)。

VX-TRACTOR
トラクション性能に関しても,ラグの形状を見直すことで向上している。VX-TRACTORに採用したインボリュートラグデザインはラグ形状を最適化しており, 効率的に力を地面に伝えることができ,安定した牽引力を発揮する。従来品対比でプライ(カーカス)を増した重厚な内部構造を採用したことで,耐久性能も向上。パンクなどの発生リスクを抑制している。

「イニシャルコストはそれなりにかかるが,摩耗ライフが長く,長持ちするため交換サイクルを伸ばすことができる。交換の度に発生する農作業のダウンタイムも抑えることができ,トータルコストで考えるとメリットは大きい。トラクション性能や耐パンク性能も高く,ユーザーにとって非常に魅力のある商品だと考えている」(同)
VX-TRACTORは欧州で企画,評価,テストを行っている。欧州での評価も高く,拡売に繋がっている。欧州生産品だが,国内で使用される大型トラクターのタイヤサイズをカバーする豊富なサイズラインアップを有し,「在庫もしっかり確保しながら販売する」(同)考えだ。使用したユーザーからは「ラグの減りが少なく,トータルでタイヤに関わるコストを減らすことができる。トラクション性能も高く,満足している」という声が聞かれる。
農機用タイヤで目指すもの
長年にわたって,国内の農業を足元から支えてきたブリヂストン。目下の課題は,今後拡販を目指すVX-TRACTORなどラジアルタイヤの認知度向上だ。「VX-TRACTORを始め,農機用タイヤにおいて当社のラジアルタイヤの認知度はまだまだ低いと感じている。VX-TRACTORはユーザーメリットの大きい非常に良い商品であり,自信を持ってお薦めできる。ユーザーに対し,いかに丁寧に説明し提案していくのか。認知度の向上は現物現場が重要になる。農家やコントラクターといったエンドユーザーだけでなく,そこに関わるまでの販売店にもきちんと認知してもらうことに努めていく。
新車装着も非常に重要だ。欧州で生産され輸入される大型農機への新車装着は進んでいるが,それをさらに伸ばしていくために欧州のチームとも連携し,装着率向上に向けた働きかけを進めていけることは当社の強みでもある。エンドユーザーである農家やコントラクター,中間の販売店,そして農機メーカーと,現物現場に根ざした認知度の輪を広げていきたい」(同)。
日本の農業が抱える問題に対し,農業を足元から支えるタイヤメーカーとしてできること
国内の農業が抱える人手不足や高齢化といった課題には,農機メーカーと密に接しパートナーシップを強固にすることで,解決に繋げていく考え。「例えば,精密農業やロボットトラクターといった新たな変化は徐々に進んでいく。こうしたトレンドを追いつつ,農家やコントラクター,農機メーカーと現物現場で密に接し,商品を提案,アップデートすることで,課題解決に貢献していきたい。当社の使命である『最高の品質で社会に貢献』は,商品,サービス,技術にとどまらず,あらゆる企業活動においてユーザーにとっていちばんよいものは何かを追求し提供する。我々がユーザーの話にしっかりと耳を傾け,それに見合った様々な提案,ソリューションの提供をこれからも行っていき,日本の農業,農家の困り事に対して足元から貢献できるよう努力していきたい」(同)。
(月刊ラバーインダストリー2024年12月号掲載)
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