【特集】農業に貢献するゴム企業
フコク物産、開発型商社としてのノウハウ活かし”企業型農業”をキーワードに社会貢献
ラバーインダストリー 2025-04-10
(2週間限定無料公開)
企業が農業に参画している例も増えてきた。ゴム業界においても工業用ゴム製品商社としてのルーツを持つフコク物産(本社:東京都大田区,木部美枝社長)が,グループ企業のフコク物流(本社:東京都大田区,高橋幸治社長)・山形営業所(山形県南陽市)に農業課を設置,コメや野菜を収穫している。
「おコメは今年で3回目の収穫時期を迎え,昨年は吟醸酒も造った。いまは野菜類も手掛けている。きっかけは現地での農業就労者の高齢化と減少による空いた田畑の有効利用について,南陽市から企業として一役買ってもらえないかとの声掛けがあったから。しかし,社会貢献だけでの参画ではなく,フコク物産が開発型商社として築いてきたこれまでのモノつくりと流通のノウハウを活かす農業の事業化モデルを模索し取り掛かった。携わるみんなが楽しみながら,裕福にならないと意味はない」と木部美枝社長は語る。
アグリビジネス推進室を設置ー作るだけではなく食卓まで届ける
フコク物産では8月26日開催の株主総会でアグリビジネス推進室の設置を承認した。「おコメや野菜,果物など作物を作るだけではなく,食卓にまで届ける流通を作ってこそ商社である当社が参入する意味を持つ」(木部社長)と話す。
フコク物産の1つのプロジェクトとしての位置づけで推進してきたコメ作り。実際にはフコク物流・山形営業所の農業課が携わる。田植え,稲刈り,草刈りを農家や周辺地域からの手も借りながら行っている。田んぼの規模は12ヘクタール。完全無農薬の7.5トンのコメが収穫できる。
「田んぼの規模は当初から変わらない。銘柄としては,つや姫,雪若丸,はえぬきの3種。つや姫という銘柄は山形県が認定した“つや姫マイスター”でなければ作れないため,田んぼは今後もこの規模を維持する。昨年からは,つや姫で日本酒の大吟醸を作っている。お酒は本来であれば酒米を使うが,近年はコメの消費量も減ってきておりコメを有効活用しようと,つや姫約480キロ分をお酒用に回し,4合瓶で600本作っている。現在フコク物産で酒販免許を取る予定で,お酒の販売が増えるようであれば田んぼも増えて行くかもしれない」とフコク物流高橋幸治社長は見通す。

つや姫で造った大吟醸酒
南陽市において,農業の持続化は厳しい状況だという。「名産のサクランボの木さえ切って離農しようと考える農家も出てきている状況だ。後継者難や農業離れで畑は余ってきており,昨年から本格的に野菜類も作っている。2,800㎡の畑に比較的作付けしやすくかつニーズの高いアスパラガス1,200株,サトイモ600株,丸ナスの苗100本,ひでん豆(枝豆)2,000株,ニンニク7,200株,大根6,000株,玉ねぎ600株を極力無農薬で育て収穫に入っている」(高橋社長)とコメや酒造りに加えて作物も拡大している。

アスパラガスの畑
「実際におコメや野菜類が東京本社に届くと社員は大喜びしている。おコメに関してはもう2回収穫を終えており,安全でおいしいおコメとして認識して社員も買っている。中には取引先の社員食堂や社内コンビニで販売してくれるなど,我々の考えに賛同してもらえていると実感することも増えた。社会福祉協議会が運営している障がい者施設にもおコメを使用してもらっている」(木部社長)
農業従事者育成目的に企業版ふるさと納税を実施
フコク物産は,3年ほど前から南陽市に農業人材育成6次化等に活用してほしいと企業版ふるさと納税として500万円を寄附し,南陽市が進める6次産業化推進を支援している。「企業版ふるさと納税については山形県にも行っている。将来農業に従事する人材を育てるため,農業高校に時代に即した農業ができる設備などを導入してもらいたい」と清水克友取締役管理本部長が思いを語る。さらに今年は南陽市の秋葉山で起きた山林火災の見舞金も含め「山林の再生を願い企業版ふるさと納税として1,500万円を寄附した」(清水取締役)。
開発型商社としてのノウハウを活かし、農業を持続性のある事業へ
今後のアグリビジネス推進について木部社長は「このところは自然災害も多く,傷がついて流通に乗せられない果物も多い。そういったものも捨てずに加工品として活用できないか研究を進めている。また,当社は住友理工さんの高圧ホースを農機メーカートップ企業に収めていることもあって農業に関わってきているが,日本の食料自給率を憂い自分たちの手で美味しい農産物を生産し,その美味しい農産物を日本国内のみならず海外の人々へ届けたいとかねてからの考えを持っている。
フコク物流にはトラックや倉庫がある。冷凍倉庫も建てた。夢は語り続ければ賛同者や新しいアイディアも出てくる。南陽市の白岩孝夫市長肝いりで展開しているプログラムもあり,私も食品衛生管理者,酒類販売管理者の資格も取った。農業に関われるのは本業でしっかり利益が出る体質でなければならない。企業的なノウハウを我々が提供しながら持続性のある事業型農業として発展させていきたい」との展望を持つ。

フコク物産代表取締役社長木部 美枝氏
(本記事は月刊ラバーインダストリー10月号にて掲載)
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