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三重中央開発・三重リサイクルセンターを見学

𠮷野ゴム工業、特殊コンベアと省エネローラがリサイクルプラントで活躍

会員限定 ラバーインダストリー 2023-05-31

 𠮷野ゴム工業の付着軽減コンベヤベルト「ノンアドEX」と、搬送物が付着しにくい耐腐食軽量ベルトコンベヤローラ「エコロンローラ」が三重中央開発(本社・三重県伊賀市/平井俊文社長)の三重リサイクルセンターに採用され効果を発揮している。そこで同社を訪問し、採用に至るきっかけや導入後の成果などについて取材した。

山端修平課長

廃棄物処理施設の焙焼炉に導入される

三重中央開発は、産業廃棄物処理などの環境事業やリサイクル事業を主力とする大栄環境のグループ企業で、三重と京都の2カ所にリサイクルセンターを設置している。

 𠮷野ゴム工業は20年以上前から大栄環境と取引関係があり、三重中央開発のほか、全国に展開する同社グループ企業に𠮷野ゴム工業のコンベヤシステムが多数採用されている。

 今回訪問した三重リサイクルセンターは、東京ドーム約15個分という70万㎡の広大な敷地に、多種多様な廃棄物を処理する各種のプラントが集結している。ここには、グループ最大容量の管理型最終処分場とともに、大型複合施設であるエネルギープラザ、焙焼炉、ジオメルト無害化施設など全部で19の施設が稼働している。

 また、京都リサイクルセンターは、京都府の南部、奈良県との県境に位置し、建設系廃棄物を中心に幅広い廃棄物に対応できる複合リサイクルセンターだ。

 三重リサイクルセンターの主な施設を紹介すると、現在造成中の第8期管理型最終処分場は、グループ最大容量の管理型最終処分場で容量は664万㎥。水処理設備を併設し、処理後の水を各施設に送水し、再利用している。第1工区は3月に完成し、現在第2工区工事が行われており、工事に際して発生する膨大な土砂の搬送に𠮷野ゴム工業のコンベヤベルトシステムが採用されている。

 複合施設であるエネルギープラザは、1日636トンの処理能力を持つ焼却施設をはじめ、焙焼施設,乾燥施設、炭化施設を備え、排熱利用による約4,000kWhの発電システムや地域へのエネルギー供給が可能なシステムを備えている。

 ジオメルト無害化施設は、化学物質を無害化する施設で1日の処理能力は4.75トンという。ジオメルトとは、米国エネルギー省が開発した技術で、約1,200~2,000℃のジュール熱(電熱)により残留性有機汚染物、PCB,ダイオキシン、DDTなどの化学物質を無害化する。

 焙焼炉施設は、焼却灰や汚染土壌を約1,100℃の高温で焼成して無害化し、土木資材などに再資源化する。重金属・揮発性有機化合物等、有害物資に汚染された土壌の無害化・再生が可能という。焙焼炉は全長32mの筒状で、ロータリーキルンを回転させながら焼成する。処理能力は1日200トンだ。焙焼炉を備える産廃処理施設は日本でも少ないという。

廃棄物を焼成する全長32mの筒状の焙焼炉


 今回紹介する「ノンアドEX」と「エコロンローラ」が採用されているのが、この焙焼炉施設だ。

「ノンアドEXクライマーベルト」と「エコロンローラ」が採用されている焙焼炉


 採用されているのは傾斜搬送に適応した「ノンアドEXクライマーベルト」という新開発製品で、三重中央開発に初採用された。
コンベヤの機長は24.8m、傾斜角度は43.55度、ベルト幅は600ミリでノンアドEXベルトにノンアドEXクライマー桟が焼付されている。搬送物は燃え殻や煤塵、汚泥、汚染土壌など。低温焼成しかできない地方自治体のゴミ焼却施設で処理された汚染土壌なども、この焙焼炉で再度焼成し無害化している。

前処理後の廃棄物はホッパーに溜められたあと、「ノンアドEXクライマーベルト」で焙焼炉に運ばれる


 前処理工程で調湿(水分を抜くこと)した廃棄物をコンベヤベルトで搬送し、焙焼炉で焼成した後、冷却処理したものを最終処分場にトラック搬送していく。前処理工程と焙焼炉をつなぐコンベヤベルトも𠮷野ゴム工業の製品だ。

 この焙焼炉施設を担当している山端修平業務1焼却課長によると「廃棄物は前処理工程で調湿するが、それでもコンベヤベルトやリターンローラへの付着が多く、付着灰がコンベヤベルトの摩耗を促進させるなどの問題が生じていた。付着が多いことで搬送効率も悪化していた」という。また付着した搬送物がベルトからこぼれ落ちるため、それを清掃する作業も大きな負担になっていた。摩耗が原因でコンベヤベルトが破断し、設備が緊急停止するという事態も発生した。

前処理後の廃棄物


 そこで、コンベヤベルトとリターンローラの見直しを検討し、𠮷野ゴム工業がかねてから提案していた、「ノンアドEX」をベースに新開発した「ノンアドEXクライマーベルト」と「エコロンローラ」の導入を決断したという。

 「ノンアドEX」は、搬送物のベルト表面への付着予防効果のあるコンベヤベルトで、水気を含み粘着性のある搬送物でも付着しにくいため搬送効率に優れ、搬送物の荷こぼれを防ぐことができる。耐久性・耐摩耗性にも優れている。

「ノンアドEXクライマーベルト」


 「エコロンローラ」は、軽い、錆びない、付着しにくい、という特性があり、鋼管製ローラに比べ重量が約2分の1と軽量だ。耐衝撃性に優れ、金属に比べて水・酸・アルカリなどに対する耐腐食性にも優れている。そのため屋外や海沿いなどの作業環境でも抜群の耐久性を発揮する。騒音軽減も実現し、作業環境の向上にも貢献する。

「エコロンローラ」


 これに合わせて、ベルトクリーナーである「駆動式ビータクリーナ」(付着灰払落し装置)も導入した。「搬送ベルトには桟が付いているため、これまではクリーナーが使用できなかった」(山端課長)が、駆動式ビータクリーナはベルトの背面を回転しながら叩き、ベルト表面に残った付着物をはたき落とすことができるという。

ベルト交換が1年から2年に延びコスト削減

 ノンアドEXクライマーベルトと駆動式ビータクリーナ導入後の成果として「従来の搬送ベルトに比べて付着物が大幅に軽減された。搬送物の荷こぼれも大幅に減少し、これまでは人員が常駐し毎日、毎時間清掃しなければならなかったが、それが週1回に減少し、常駐者を配置しなくても済むようになった。付着物と荷こぼれが大幅に減少したことで、搬送効率も大幅に向上し、現場作業員の負担も大幅に軽減された。また、ベルトの摩耗が低減されたことで、年1回だったコンベヤベルトの交換が2年に1回に減少し、ベルト破断による緊急停止もなくなり、計画通り2年に1回の定期交換で安定操業ができるようになった。ベルト交換が1年から2年に延びたことでコスト削減にもつながった」(同)という。

焼成後の廃棄物はトラックで最終処分場に運ばれる


 「特にありがたいのはベルト破断がなくなったこと。こうした突発的な事態でラインがストップすると、修理のために人的負担が増える上、廃棄物の処理が滞り、顧客にも迷惑をかけてしまうので非常に助かる」(同)

 今後については「焙焼炉で取り扱っている廃棄物は水気が多く、コンベヤ内に結露が多く発生し、コンベヤ内部の腐食を促進させている。現在、これを改善させる方策を検討している」という。これに対応するコンベヤベルトシステムの開発が、𠮷野ゴム工業にとっても今後の課題と言える。

第7期管理型最終処分場


 𠮷野ゴム工業では、ノンアドEXクライマーベルトの製造技術をもとに、「ノンアドEX Sコン(急傾斜ベルト)」の開発にも取り組み、このほど完成したとのことだ。

(ラバーインダストリー2023年1月号に掲載)

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