【The Long Interview】
新しい人事制度へ移行したブリヂストンが目指すものとは
ラバーインダストリー 2021-04-19
人財要件を定義し直し明確化
■ジョブ型を導入することで期待されること
ポジションの役割や責任を明確にし、それに対するアウトプットを出してもらうことになるため、達成できた人には例えば賞与や報酬面での反映を行うが、一方で職責に見合った役割を果たせないとなると、ポジションの入れ替えも視野に入る。ジョブ型の厳しい面だが、そうした点を含め、適財適所がより明確になるだろう。
■スペシャリスト職を新設
今回の改革では、新たにスペシャリスト職を新設した。優秀な人財全てが組織マネジメント力に優れているわけではないため、全てライン長(組織長)にしてしまうと、組織の肥大化、非効率化に繋がるケースが生じる。そのため、スペシャリストという職位を設け、個々の専門性が求められる環境で能力を発揮してもらう位置づけとした。従来の主任部員の形に近いが、主任部員で少々曖昧な部分があった処遇などについて、役割との紐づけをしっかりと行っていく。管理職レベルにスペシャリスト職を新設したことで、組織の効率と役割の明確さ、それに適した処遇が実現できると考えている。
■日本の企業でジョブ型の採用が相次いでいるが、それに伴う人財の流動性について
人財の流動性については、市場の要求でもあり、ある程度やむを得ないことだと考えている。例えば、デジタル人財のように今後市場で激しい争奪戦が起こることが想定されるポジションには、報酬もある程度市場のレベルを踏まえた形にしなければ対応できないと考えている。報酬については、従来は例えば同じ課長なら同じ報酬だったが、ジョブ型の導入により報酬体系そのものも一律ではなくなる。役割や責任に応じたものに変更されることになる。
デジタル人財のように市場性が強い、より専門性が高い職種の報酬は、市場の水準を参考にしながら調整していくことは必要だ。しかし、一方で専門性の高いポジションすべてにおいて市場性を強く意識する必要があるかと言えば、そこは違うと思う。
■一般層の定期昇給制度の廃止について
従来の定期昇給制度のように1年歳を重ねたら昇給するのではなく、能力や役割、経験を評価し、報酬を払うことに舵を切った。
評価は昇給と賞与で異なる。賞与は各々が年初に設定した目標に対するアウトプットという点で従来と変更はないが、昇給については個人の能力、成長をしっかりと見極める形に整理し直した。そこは今回のポイントの一つでもある。そのため、それなりにアウトプットを出していても、昨年と同レベルのまま成長がないとなれば昇給とはならない。一人ひとりの成長を今まで以上に見て判断する形となるため、成長が止まっている場合、評価は厳しくなっていく。
ただ、その能力、成長を判断する際、判断の軸がなければ評価はできない。そこで昨年、ワーキンググループを作り、社外の知見も取り入れながら、時間をかけて各職位、各職群、各役割に人財要件を明確化した。人財要件は従来も存在したが、曖昧な部分があったため、階層ごとに定義をし直した。人財要件を明確化したことは大きな変化だ。人財要件は評価だけでなく、人財の配置や採用など様々な場面で活用していきたい。
■年功序列による報酬制度を廃止したことによるメリット
年功序列による報酬制度を廃止したことは、会社に対してアウトプットを出している人に報いていくことなので、ある意味フェアだ。それぞれが持っている役割や持ち場で能力を発揮してもらい、目標値以上のものが出せれば、それに対し報いていく点は大きなメリットになるだろう。
一方で、人財要件の中身をきちんと理解し、人を見極めていく力というものを、特にマネジメントがつけていかなければ、仕組みはあるが謳い文句だけということになる。どういう要件が求められ、その人がどこまで要件を満たしているのか、設定した目標に対してどれだけアウトプットを出しているのかを判断するマネジメントの見極め力が、これからはより求められてくる。それを担保しなければ、制度として的確に動くことはないと思う。また、マネジメントは部下に対し、どうフィードバックしていくのか、その説明力も上司と部下の間のコミュニケーションではより求められてくる。
(次ページ 新卒に職種別採用を導入)
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