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【インタビュー】SDGsを知る

東京都市大学大学院 環境情報学研究科 教授 佐藤真久氏、SDGsの17目標を“掛け算”しイノベーションを起こす

その他 2020-03-09

中小企業とSDGsを結びつけるキーワードは“日本の社会課題”

 ■日本の社会課題とSDGs
 企業が環境や社会に与える影響が大きいからこそ、企業の力を必要としているSDGsは、大企業だけでなく、中小企業も「自分(自社)ごと」として取り組む必要がある。

 しかし、2018年12月に関東経済産業局と日本立地センターが発表した「中小企業のSDGs認知度・実態等調査」によると、「SDGsについて全く知らない」と回答した中小企業経営者は84.2%(全体の回答社数は500社)にも上った。中小企業におけるSDGsの認知度は、まだまだ低いと言えるだろう。

 中小企業がSDGsに取り組むためには、今後、SDGsと日本の社会課題の関連付けが非常に重要になってくる。SDGsの有無は別として、地域の社会課題と向き合っている中小企業は多い。そういった社会課題とSDGsとの繋がりを言語化することが、中小企業のSDGs経営に繋がってくるだろう。

 日本の社会課題例としては、老朽化する社会インフラ、日本が一歩先行く超高齢化社会、自然災害大国日本、グローバルで繋がる経済の課題――などが挙げられる。

 例えば「老朽化する社会インフラ」は、SDGsのNo.3(すべての人に健康と福祉を)、No.11(住み続けられるまちづくりを)、No.12(つくる責任、つかう責任)と関係が深く、これらの目標に同時にアプローチ(同時解決)することが求められている。

 ■実践のためのツール「SDGsコンパス」

SDGsコンパスの5つのステップ(出典:https://sdgcompass.org/wp-content/uploads/2016/04/SDG_Compass_Japanese.pdf


 SDGsの取り組みに対する言語化と、実践のためのツールとして「SDGsコンパス」がある。同指針は、企業がどのようにSDGsを実践していけばよいのかを提供するもので、グローバル・リポーティング・イニシアチブ(GRI)、国連グローバル・コンパクト、持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)によって開発された。

 SDGsコンパスは、①SDGsを理解する(CSR部門だけでなく、役員・営業など、全社での理解を促進)②優先課題を決定する(バリューチェーン全体におけるSDGsのタグづけ、影響度合いの分析、優先課題を特定)③目標を設定する(世界や社会ニーズにあわせた目標設定、外部視点から必要な目標設定)④ 経営へ統合する(CSR活動ではなく、経営・事業へ統合)⑤報告とコミュニケーションを行う(取り組み状況・進捗の開示、多様なステークホルダーとのコミュニケーション、対話、協働へ)――といった5つのステップで構成されている(※カッコ内は佐藤教授による補足)。すべてのステップを一巡した後は、②~⑤を繰り返し、ブラッシュアップしていく。

 同指針は、大規模な多国籍企業に焦点を置いて開発されたものだが、中小企業やその他の組織でもこの指針を活用することができる。

 現在、主に②のタグづけで終わっている企業が多いが、ぜひステップ③以降に取り組んでもらいたい。

 

佐藤真久(さとう・まさひさ)氏の略歴
 東京都市大学大学院環境情報学研究科教授。筑波大学・大学院(修士課程)修了、2002年英国国立サルフォード大学にてPh.D取得、地球環境戦略研究機関(IGES)研究員、ユネスコ・アジア文化センター(ACCU)のシニア・プログラム・スペシャリストを経て現職。現在、SDGsを活用した地域の環境課題と社会課題を同時解決するための民間活動支援事業委員長、国際連合大学サステイナビリティ高等研究所客員教授、UNESCO ESD-GAPプログラム(PN1)共同議長、責任ある生活についての教育と協働(PERL)国際理事会理事、IGESシニア・フェローなどを兼務。協働ガバナンス、社会的学習、中間支援機能などの地域マネジメント、組織論、学習・教育論の連関に関する研究を進めている。

 

■書籍紹介
未来の授業-私たちのSDGs探究BOOK』(宣伝会議、監修/佐藤真久氏)
 SDGsと日本の社会課題群を関連づけ、世界と日本をつなぐ「グローカル教材」として、またSDGsの理解をさらに深める「探究型教材」として、幅広い活用に期待が寄せられている(協賛20社)。全国約2万校の小学校に配布された。

 小学校高学年向けの書籍だが、大学、企業や自治体、社会教育の現場でも活用可能。日本の地域課題とSDGsの繋がりを深める内容となっており、本記事でも触れた日本の社会問題について、具体的に16例が掲載されている。

 

SDGsは事業アイデアの宝庫

 デロイトトーマツコンサルティングによると、SDGsは合計で1,000兆円以上もの巨大市場を生み出すと試算されている。SDGsに取り組むことは、決して慈善事業ではない。社会課題は様々な事業アイデアの宝庫と言え、SDGsに取り組むことは、企業の成長に繋がるといっても過言ではない。SDGsへの取り組みは、待ったなしと言えるだろう。

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