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【インタビュー】SDGsを知る

東京都市大学大学院 環境情報学研究科 教授 佐藤真久氏、SDGsの17目標を“掛け算”しイノベーションを起こす

その他 2020-03-09

 17分野の目標と169のターゲットから成り立つ持続可能な開発目標(SDGs)。地球上にある豊かな自然や資源を未来に残し、2030年の世界をより良いものにすることを目的としている。近年頻発している異常気象など気候変動問題への危惧が叫ばれる中、SDGsはより存在感を放つようになった。企業によるSDGsへの意思表示やアピールは増加しており、ゴム関連企業も例外ではない。ただ、そもそもSDGsの本質や、企業がSDGsに取り組む意義とは何か。東京都市大学大学院環境情報学研究科佐藤真久教授に聞いた。

佐藤真久氏

1つの目標のみに貢献するのでは意味がない

 ■すべての目標は繋がっている
 企業がSDGsに取り組む意義は、その達成自体に企業の力が必要であることに加え、特に2020年からは、企業が投資面においてESG(環境・社会・ガバナンス)で評価される時代に突入している点も大きい。SDGsに取り組まなければ、投資家から相手にされず、資金調達が難しくなる状況が生まれようとしている。

 その一方で、現在多くの企業の取り組みが“SDGsのタグづけ”の領域から抜け出せていないことが懸念される。タグづけとは、文字通り企業の取り組みに各目標をタグづけすることを指す。

 SDGsは17の目標全てがそれぞれつながっており、複数の目標を掛け算し、解決を目指す“同時解決性”が求められている。17の目標のうち1つにしかアプローチしないのは、SDGsの本質を理解せず、表面的に取り組む“SDGsウォッシュ”で終わってしまう。1つの目標に貢献しても、他の目標を蔑ろにしては意味がない。

 SDGsにおいて、なぜ“同時解決性”が必要なのかについては、SDGsが合意された時代背景とその世界観から読み取ることができる。

 ■SDGs合意の時代背景
 SDGsは、その前身であるMDGs(ミレニアム開発目標)と比較すると、合意された時代背景が良く分かる。2000年に採択されたMDGsは、主に途上国を対象に貧困、飢餓、HIV/AIDS、男女格差など貧困・社会的排除問題の解決を目的としていた。

 対して2015年に採択されたSDGsは、高齢化、貧困格差、教育の質など貧困・社会的排除問題に加え、気候変動、生物多様性喪失、自然災害など地球環境問題の同時解決を目的としている。MDGs採択時とSDGs採択時を比較することで、社会的背景が大きく異なっていることが分かる。

 さらに現代社会は、既存の枠組みでは捉えにくいVUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性の高い状況)の時代。この環境下では、これまでと異なる予測不能な状況が生じており、現代の社会課題は、かつて効果的だった解決策では対応が難しい「複雑な問題」へと発展している。SDGsはこの複雑な問題への対応を促している。

 ■SDGsの世界観
 SDGsが有する世界観には、2050年に世界人口が98億人に到達するという予想を踏まえた“地球の限界”への配慮を求める「地球惑星的世界観」をはじめ、“誰一人取り残さない”という人権と参加原理に基づく「社会包容的な世界観」、“世界の変容”という異なる未来と社会を求める「変容の世界観」――がある。

 SDGsはこれらを“共有された責任”として対応を求めている。

SDGsの17目標を“掛け算”しイノベーションを起こす

(左から)個別目標としてのSDGs、円環としてのSDGs、スパイラルとしてのSDGsのイメージ図


 ■個別目標から円環、そしてスパイラル型の発想へ 
 企業は、17の目標それぞれの達成を目指すのではなく、掛け算し、世の中にイノベーションを起こしていくことが重要だ。それが、企業にとってのビジネスチャンスとなりうると言える。

 SDGsが合意された時代背景およびその世界観を踏まえた本質を理解したうえでSDGsに取り組んでほしい。

 取り組む際には、17の目標それぞれに対応する発想(個別目標としてのSDGs)から、SDGs同士の関係性と複雑性を理解(円環としてのSDGs)し、さらに、動的で包括的な問題解決(同時解決)に向けた“力を持ち寄る協働”(スパイラルとしてのSDGs)へ発想を転換する必要がある。

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