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【エッセー】

新入社員には“育つ環境”の提供を

その他 2019-03-28

成蹊大学 教養カリキュラム 全学教育講師/人事コンサルタント 鈴木賞子氏

 1月に投稿してから早2カ月。気が付けば3月も半分終わりました。この時期は、どこの大学も学位授与式(卒業式)や入学式・新学期の準備で追われているので、実は教職員は予想以上に忙しいのです。企業も同じでしょう。3月に就職情報が解禁になって会社セミナーの開催や、4月に入社する新入社員の受け入れなどで忙しいと思います。私もかつて企業で人事担当をしていた時には、この時期は残業続きでした。

 職場でも、どんな新入社員が配属されるのだろうと楽しみであり少し不安でもあり、でも気が引き締まる時期でもあります。後輩が入ってくれば、先輩としてきちんとしなければなりません。良い緊張感があって良いですね。

 

働きながら好きなことを続けたい

 今回は、たくさんの大学の学生と接していて感じることをお伝えしようと思います。最近の学生は、転勤がない方が良いと思っている、企業選びの際に福利厚生や待遇を気にする、などよく聞くと思います。確かに以前と比較すると、そういう学生は増えているかもしれません。しかし、それは増えていても一部です。今の学生は生まれた頃から節約ムードの中で育ってきているので、ある意味生活にも堅実です。アルバイトで学費を賄う学生も奨学金で大学に通う学生も増えています。本当に素晴らしいと思います。

 学生と話をする中で感じることがあります。例えば、アルバイトがきついので本当は辞めたいけど一緒に働くアルバイト仲間が良いから辞めない、一つのアルバイトを長く続け頼られ後輩の指導にあたる、という学生も多いのは事実です。そして、部・サークル活動を卒業後も続けたいという学生も増えています。私は学生時代にスポーツ系の部に所属していました。卒業後も続けたいものの練習の場所がなく、結果続けることができませんでした。しかし、先輩や後輩との交流は現役後輩を通して続いています。好きなものを続けたいという人はいつの時代もいますが、我々の世代は仕事や環境の中で続けられなければ仕方ないと思っていました。

 しかし、最近の考え方は少し違うようです。最近は好きなことを本当に続ける人が増えています。スポーツでも音楽でも、週末ごとに活動を続ける人が増えています。大学での付き合いを続けたいという人が増えています。それが就職活動の際の企業選びで、できればお休みがきちんとあった方が良いとか、できれば転勤がない方が良いという考えに繋がっていることもあるようです。実際、企業の方から聞いた話では、転勤させたら辞めた新入社員がいて、その理由が仲間と音楽を続けたいというものでした。転勤先から毎週末東京に戻るのは、お金が続かないし大変というのが理由のようです。働き盛り世代の介護による職場離脱に加え、若手社員の退職は企業にとって厳しいことです。でも、そういう話は最近よく聞きます。

 

会社の関係者に相談しない若手社員

 会社を辞める理由と言えば、昔は人間関係が多かったのですが、今は仕事が難しくて覚えることができず辞めたり、仕事の悩みを社内の誰にも相談できずに気が付けば辞めるということも多くなっています。企業の人事担当者や先輩社員から「突然辞める若手社員が多くなっている。悩んでいる様子もなかったので安心していた。悩んでるのなら相談してほしかった」という話を時々聞きます。悩みはきっと相談していると思います。

 ただ、会社関係者ではなく、友人や先輩など会社とは関係のない人に相談していることが多いようです。友人や大学の先輩は一緒に働いているわけではないので、解決できるような的確なアドバイスはできません。しかし、会社の関係者に相談しないまま辞める若手社員は増えています。関係者に相談しないと解決できなくても、関係者に相談できないのも事実です。ある意味、会社や接する人との信頼関係ができていないと言えます。

 

“変化を得意としない”世代

 転勤のない会社、休みがとれる会社、車を運転しなくてすむ仕事、などを望むのはある意味「変化を得意としない」世代の特徴です。転勤がなければ自分を取り巻く環境や生活圏が大きく変わることはないし、休みが取れれば休日には好きなことをしてリフレッシュできると考えています。アルバイトの経験でしか働くことはイメージできず、まだしたことがない経験に対し、一部の情報や情報過多で色々と不安があります。しかし、実際仕事をし始めて自信がついてくると意欲も出て来るし、転勤に対する考えも変わって来ます。何より仕事で悩んだり相談できる上司や先輩がいれば、新入社員にとっては心強いものです。

 また最近よく聞くことは、話はできるけれど書けない新入社員が多いということ。話が上手いけど、営業日報・メール・手紙が書けないことが問題になっています。就職活動でも、エントリーシートや履歴書が書けないで苦労する学生も増えています。書く機会が少なくなっているのも影響しています。手紙やはがき、年賀状やお礼状など書いた経験のない学生はたくさんいます。メールやSNSでの発信は限りなく話し言葉(会話)なので、書き言葉を知らないのは当然のことかもしれません。これも世代の特徴の一つと言えます。私も最近の新人研修で、プログラムに文書作成の仕方を入れてほしいというオファーが多くなりました。

 

大切なのは信頼関係の築き方

 新入社員とは最初のコミュニケーション(信頼関係の築き方)が大事です。新入社員が配属されたらしばらくの間は、仕事で関わる部下や後輩とは少しでも良いので毎日必ず会話をすることをお薦めします。挨拶、報告、相談のタイミングを決め一人で抱え込まないようにすることが大事です。何でも指示するのではなくルールを伝え、叱られることを恐れず相談できる関係性を作るのです。

 また、これが大事なことですが、営業などでは取引先との関係性に悩みはないかなど、しばらくの間は様子を見ることも大事です。実は、社内に問題がなくても新人ということで取引先からパワハラのようなことを受けることもあり、会社に迷惑をかけるのではないかと心配して言えないでいる新人もいます。最近の転職の理由の一つにもなっています。

 新人は育てるよりも育つ環境の提供が大事です。上司や先輩が新人を信じて愛情を持って接すれば戦力になります。焦って育てようとすると「支配と依存の関係性」ができてしまい、自立を妨げます。知らないことは必要であれば知れば良いし、足りないことは補えば良いし。我々の知らないことを知っているのも新人です。我々が苦手なことや知らないことを新人から学ぶのも良いかもしれません。

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