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【エッセー】成蹊大学 教養カリキュラム 全学教育講師/人事コンサルタント 鈴木賞子氏

“節目”は職場の人間関係を見直す良いチャンス

その他 2019-01-28

成蹊大学 教養カリキュラム 全学教育講師/人事コンサルタント 鈴木賞子氏

 今年は年明けから近所の神社をはじめ神田明神や八坂神社(京都)伊勢神宮(三重)などに参拝をしてきました。神社には日常的にお参りしています。通りかかった場所に神社があれば必ずお参りするようにしています。そのたびに感謝の気持ちや謙虚になる機会をいただきます。今年は「平成最後」と元号も節目を迎えるので特別感を持ってお参りしている人も多いかもしれませんね。

 人それぞれにたくさんの節目(ターニングポイント)があります。平成生まれの人も30代に突入です。元号でくくる必要はありませんが、昭和生まれの方にとって平成も30年経ったのか、とつくづく思う人も多いはずです。いまや平成生まれが活躍する時代です。ぜひ活躍してもらいましょう。

 企業組織の節目は新入社員が入社する4月と言えるでしょう。入社する新入社員にとっても節目です。企業は新人を職場に迎える前に人間関係の在り方を見直す良いチャンスかもしれません。皆さんは上司(先輩)や部下(後輩)とのコミュニケーションはうまく行っているでしょうか?コミュニケーションの難しさは相手と自分とお互いが感じる「ちょうど良い距離」を保つことにあります。自分と部下(後輩)、自分と上司(先輩)達と同じ距離感で接することはできないのです。

 新入社員が入社する前のこの時期、部下や後輩のいる方は、自分の接し方が部下や後輩にどのように思われているのか、少し考えてみましょう。自分でうまく行っていると思っても相手から見るとうまく関われていないこともあります。部下や後輩は仕事上何か悩みや相談があってもすぐに上司や先輩に相談することは少なく、まずは友人や家族など会社とは関係のない人に相談することが多いようです。だから、一見うまく行っていると思うコミュニケーションでも問題があることもあるのです。

 では、後輩や部下からみてどのような上司や先輩がコミュニケーションがとりにくいのでしょうか。代表的な例(一部)を挙げてみます。

 ◇仕事以外の会話に無理に入って来て、話がわかったように同調する

 ◇部下や後輩の全て(仕事だけでなくプライベートも)を把握しようとする

 ◇上司や同僚などの悪口を言ったり噂話をする

 ◇自分の意見や考えが他の人と同じであるように(他の人も同じ考えだ)伝える、など。


 「仕事以外の会話に無理に入って来て、話がわかったように同調する」ことは、部下や後輩には良い上司や先輩と思われたいと伝わってしまいます。例えば、飲み会の場などでは会話に無理に加わらず笑顔で聴いているだけでも良いのです。きちんと聞いていれば意見やアドバイスを求められても話に入ることができます。

 「部下や後輩の全て(仕事だけでなくプライベートも)を把握しようとする」のは、上司・先輩本人の性格や自己満足であることが多いようです。全てを把握しないと気が済まない人もいますが、仕事を進めて行くうえで必要なことを把握すれば良いのです。情報はなくても不安になるし、あり過ぎても心配になります。仕事を進めて行くために必要な把握すべきことは何かを明確にし、部下や後輩から直接伝えてもらうことが大事です。他者から聴いた話は間違った理解や主観を経由していることもあるし、本人が話をしていないことを上司や先輩が知っていたら「どこから知ったのだろう?」と不安になります。たとえ他者から聴いたとしても本人の口から伝えらえるまでは触れないことです。

 「上司や同僚などの悪口を言ったり噂話をする」は「自分も他で言われるのではないか」と不安を与えます。それどころか、口が軽いと信頼されません。一番気をつけなければならないことです。反対に特定の人ばかり褒めるのも慎んだほうが良いでしょう。他の人の反感をかったりするきっかけにもなるからです。いずれにしても新入社員に先入観を与えないためにも特定の人に関しての話はあまりしないように心がけたいものです。

 「自分の意見や考えが他の人と同じであるよう(他の人も同じ考えだ)に伝える」は、自分の考えや意見を正当化するためについ言ってしまう表現です。言われれば「えっ、そうなんだ」と必要以上にプレッシャーを感じる人もいるし、「他の誰が言っているのだろう」と上司が伝えたい本質とは関係のないことに思いを巡らすこともあります。「(他の人は何を言っているかわからないが、他の人が関係ないが)、自分はこう思う」と上司の一個人の立場(責任者)として伝えるのが大事です。仕事の経験がない新入社員にとっては自分に伝えられていることが大ごとになっていると思うと、かなり不安になると思います。

 以上のことは決して面倒なことではなく、多様性を持ったたくさんの人が働く組織では当たり前のことです。大事なのは最初の接し方です。個人それぞれと程よい距離を時間をかけて築き保ちながら、後輩や部下が仕事で困った時にタイミングを外さず相談できる関係性を築くことです。信頼を失うのは一瞬ですが、信頼関係を築くのは時間がかかります。考えは行動に現れます。上司や先輩が何等かに不安や悩みを抱えていると落ち着かない行動もとりがちです。そんな落ち着かない行動は部下や後輩にも不安を与えます。そういう意味では、新入社員が入社する前に自分自身の悩みや不安を少しでも解決をしておくことも大事かもしれません。

 大学卒業後に入社したメーカーでは人事の仕事をしました。その時に上司から言われた言葉ですが、「鈴木さん、人事はどんなことがあっても社内では急がない、走らない、慌てないこと」。人事が慌てると「何があったのだと社員が不安になる」とのことでした。その時に人は見ているのだと実感しました。落ち着きのある行動は普段の考えが出るものだと、心がけて行動しています。

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