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性能面に加え、海外プラントが寄与

SSBRの販売が拡大

原材料 2016-11-07

日本ゼオンのシンガポール工場

日本ゼオンのシンガポール工場


 低燃費タイヤを中心に使用される溶液重合スチレンブタジエンゴム(SSBR)の販売数量が、順調な伸びを示している。先月、17年3月期第2四半期業績を発表したJSR、日本ゼオンのSSBR販売数量は、いずれも前年同期に比べ大きく伸長した。世界各国で徐々に導入が進んでいるタイヤのラベリング制度を追い風に、SSBRの販売は今後も拡大していくものとみられている。

 JSRの第2四半期業績では、SSBRの販売数量は、前年同期に比べ15%程度伸長した。エラストマー全体の販売数量が同5%の伸びだったことをみると、SSBRの伸びが際立っていたことが分かる。

 大きく伸びた要因は、タイのSSBR生産拠点である「JSR BST エラストマー(JBE)」が寄与したこと。同拠点の販売数量は前年同期比で40%も増加した。JBEでは、下期から第2期(年産5万トン)が商業運転を開始するため、販売数量のさらなる増加が見込まれている。

 一方の日本ゼオンのSSBR販売数量も、国内で前年同期比6.1%、海外で同19.6%伸長した。同様に海外拠点(日本ゼオンはシンガポール)が販売拡大に寄与した。

 SSBRは、低燃費タイヤの需要拡大を背景に、世界需要が年率で6-8%成長している。そうした拡大を見越し、SSBRを生産する日系メーカーはここ数年、海外進出を活発化してきた。JSRはタイに進出し、日本ゼオン、旭化成、住友化学はシンガポールに進出した。拠点を有していることに加え、日系メーカーのSSBRは性能、品質面から世界の中でも優位にあるとされており、今の販売数量拡大に繋がっているものとみられる。

 JSRはタイに次ぐプラントを2017年度中にハンガリーで立ち上げる計画で、日本ゼオン、旭化成もさらなるプラントの検討を進めている。SSBRは、拡大傾向にある需要への対応が今後一つのカギになっていくものとみられる。

他の汎用ゴムは苦戦の部分も

 SSBRが好調に推移する一方で、タイヤ用途に使用される乳化重合スチレンブタジエンゴム(ESBR)、ブタジエンゴム(BR)といった他の汎用ゴムは苦戦傾向にある。

 第2四半期業績で、JSRのエラストマー全体の販売数量は5%増にとどまり、日本ゼオンの汎用ゴム販売数量も前年同期比で4%減となった。両社ともSSBRが大きく伸びているにもかかわらず、そうした結果となった要因には国内タイヤ生産の減少によるESBRなどの販売減があげられる。

 JSRの清水喬雄取締役上席執行役員は、第2四半期決算説明会の席上で「SSBR以外の汎用ゴムをどうするのかは重要なところ。国内だけではダメということであり、海外市場の開拓をしていかなければならない」と語っている。順調に伸びていくSSBR需要への対応とともに、SSBR以外の汎用ゴムについてどのように対応していくのかが注目されている。

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