建機向け回復で奈良工場タイトに
【インタビュー】十川ゴム社長十川利男氏、第1四半期は前年同期並み
工業用品 2017-08-07
「足元の状況は前年同期並みだが、春前からの原材料価格の上昇で収益的には厳しくなると見ている」と語る十川利男社長。注力製品の展開強化や新市場の開拓、原価低減策をさらに推進し、増収増益を達成したい考えだ。
■前期(17年3月期)業績の概況
前期売上高は145億8,300万円で前期比0.8%増、経常利益は2億5,800万円で同14.1%増となったが、中国経済の鈍化やアメリカ新政権の誕生、円高基調など政治経済両面で不透明感が増し、全体的には好調とは言い難い状況だった。
特に厳しかったのが医療用機器関連やガスホースなどの販売の落ち込みで、これらを自動車関連製品や建設機械関連の環境対応燃料ホースなどでカバーした結果、売り上げ面では前期比ほぼ横ばい、利益面では原価低減努力もありプラスを確保した。
■前期の部門別売上高
ホース類の売上高は59億600万円で同1.3%減。ゴム工業用品類は売上高が77億5,000万円で同2.6%増となった。
ホース類は土木・建設機械産業用の燃料ホースや船舶・車両産業用の列車ホース、食品機械産業用のシリコーンホースなどが大きく増加したが、自動車産業用の燃料ホースなどが減少し微増。
樹脂ホースは食品機械産業用の給水ホースなどが増加したが、その他産業用が減少し、減収となった。
ゴム工業用品類は、型物で自動車産業用が大幅に増加したものの、医療機器産業用が減少し前期並み。押出成形品は自動車産業用の燃料供給品、船舶・車両産業用のエキスパンションジョイントや食品機械産業用のシリコーンチューブの増加により増収となった。
ゴムシートはフッ素シートの拡販に加え、住宅設備産業用の耐電シートなどの増加で増収した。
■今期(18年3月期)足元の状況
スタートの4月はまずまずだったが、5、6月と伸び悩んだ結果、第1四半期は前年同期並みとなった。半導体関連に多少の動きが出ているものの、五輪関連の動きも感じられず、さらには春前から原材料価格が上昇している。
今期はもちろん前期以上の予算を組んでいるが、収益的にはかなり厳しくなると予想している。原価低減策をさらに推し進め、何とか増収増益を確保したいと考えている。
■製造拠点の足元の状況
徳島、奈良、堺の3拠点ともに稼働状況は前年並みで、特に目立った動きはない。ただ、建機関係の需要が戻ってきている影響で、関連製品を製造している奈良工場がタイトになってきている。またゴム板を製造している堺工場では特殊ゴムシートの生産が増えているので、生産ラインの効率化に取り組んでいる。
■中国の製造拠点の状況
前期(16年1-12月)の売上高は円換算で2億6,300万円、前期比21%増と規模は大きくはないが好調だった。元々は金型成形品の製造拠点だったが、3年ほど前から建機向けのホースアセンブリを行っており、中国国内での関連需要の増加とともに売り上げを伸ばしている。前期は中国向けと日本向けの売上高比率が56対44となり、初めて中国が日本を逆転した。
足元の状況も好調で、金型成形品、ホース関連ともにフル生産が続いている。このまま為替が110円前後で推移すれば、今期もまずまずの業績を残せるだろう。
■期待する製品
旺盛な需要が見込める環境対応燃料ホースや、災害対策関係の放射線遮蔽シートに期待している。特に放射線遮蔽シートは原発関連だけでなく、X線を抑える製品として医療関連業界からの引き合いもあり、展開の幅を広げている。素材技術を応用することで、ゴム押出成形品や樹脂にも同様の機能を持たせることによりラインアップ拡充を図り、新市場の開拓を粘り強く進めていく。
また燃料ホースについては、今後の需要増を見込み、製造ラインの効率化を進め低コスト化を図る方針だ。
■課題点
問題は多々あるが、社員の年齢構成に偏りが出てきている点が最大の課題だ。現在は機械化による省人・省力化を進めるとともに、ハンドクレーンやパワーアシストスーツなどの導入で対応しているが、今後は女性社員および若手社員の活躍に期待し、全社一丸で課題解決に取り組んでいく。
■設備投資
前期は製造現場における設備の省人・省力化を進めたが、老朽化した一部設備の更新も含めて今期も引き続き同様の投資を実施していく。また大型地震に備え、本社社屋の耐震補強工事も7月から開始しており、12月一杯で完了する予定だ。前期の投資金額は9億8,700万円だったが、今期は工場に加え本社への投資も実施しているので、10億円以上になると見込んでいる。
■製造部門でノー残業デー
これまで本社部門ではノー残業デーを導入していたが、製造部門でも実施していく。取りあえずは、暑い時期の8-9月の2か月間限定で試験的に実施していく計画だ。
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