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自動車用防振ゴム 世界No.1メーカーの知見を駆使

住友理工の木造住宅用地震対策制震システム 「TRCダンパー」、繰り返しの地震に高い効果

工業用品 2017-06-30

TRCダンパー

 
 住友理工の木造住宅用地震対策制震システム「TRCダンパー」の採用が拡大している。昨年発生した熊本地震では、繰り返し起きた地震により多くの家屋が倒壊した。繰り返しの地震に強いとされる制震という考え方が、人々の間に浸透しつつあるのも採用拡大を後押ししている。

 TRCダンパーは、住宅の筋交い部分に用いるダンパー。ダンパーに組み込まれた特殊粘弾性ゴムが揺れに応じて伸び縮みし、地震の運動エネルギーを熱エネルギーに変換することで揺れを吸収する。

 特殊粘弾性ゴムは、同社のコアコンピタンス「高分子材料技術」の1つである配合技術を駆使した。自動車用防振ゴムの世界No.1メーカーの同社が、長年にわたり培ってきた知見が詰まっている。

 例えば、震度6強では最大50%程度揺れを吸収する。建物へのダメージが軽減され、その蓄積も少ないため、繰り返しの地震にも高い効果を発揮する。

 使用される特殊粘弾性ゴムは経年劣化や温度依存性が少なく、メンテナンスがなくても優れた効果が持続する。60年相当の劣化促進試験での性能変化は、僅かに10%以下。「仮に100年でも10%程の変化で済むと考えられる」(住友理工)。

 国土交通大臣認定「壁倍率」や日本建築防災協会の技術評価を取得しており、新築時は耐力壁として耐震等級の向上に繋がるほか、リフォーム時には、地方自治体によっては耐震補強の補助金対象工法にもなる。「業界でも両方の認定、評価を取得しているのは、TRCダンパーだけ。こうした認定、評価を取得していることは施主にとって安心材料になるはず」(同)と話す。

 ダンパーそのものの性能以外で特徴的な点が、導入を検討する全棟数に対し、建築設計で最も精度の高い「時刻歴応答解析」という効果解析を実施していることだ。家屋の設計に対し、TRCダンパーを採用した際の効果をシミュレーションするもので、BCJL2という震度6強程度に相当する入力波を用いる。これにより、「家のどの場所にTRCダンパーを設置し、全体で何本設置すれば最大の効果を発揮するのかが、施主には一目でわかる」(同)。このシミュレーションは発売時から業界に先んじて行っており、TRCダンパーの技術力や性能を補完、証明するものとなっている。

 施工方法にも工夫を加えた。設置には特殊な工具を必要とせず、大工が従来から持っている道具で設置できるようにした。「家を建てるのは大工の方。施工のしやすさも考えた」といい、1本設置するのにかかる時間は、「30分もあれば十分」(同)という。

 生産は小牧製作所で行っている。出荷の際の製品検査は抜き取りではなく、全数を試験し合格したものだけを出荷する。そのため、出荷された製品は確かな品質が保証されていることになる。ここには、自動車業界の慣習が活かされている。

 ラインアップの拡充も図っている。2016年秋には、2×4住宅に対応した枠組壁工法住宅用地震対策制震システム「TRC-2×4」の販売を開始。今後もニーズにマッチしたラインアップを充実させていく考えだ。

 拡販には、戸建て市場の85%を占めると言われている工務店などへの販売がカギを握り、工務店にいかに採用されるかが、ポイントとなる。住友理工は、戸建て住宅の業界トップである積水ハウスの鉄骨住宅にも制震ダンパー(標準採用)を納入しており(OEM供給で製品名はSHEQAS)、住宅向けの実績も豊富だ。

 さらに同社では制震への認知度を高めるため、工務店を対象としたセミナーを実施。今年3月には東海地方で開催し、今後東京や大阪でも同様のセミナーを計画している。また住宅用部材、商材を扱っている代理店との関係も強化していく考えだ。

 TRCダンパーの16年度の売上高は、前年度比で190%。17年度は16年度比で約2倍の売り上げ目標を掲げている。

 人々の命と財産を地震から守るTRCダンパーの今後が注目される。

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