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顧客や社会の課題解決に繋げる

ホッティーポリマー、3Dプリンター事業に注力

工業用品 2022-05-11

 ホッティーポリマーが、3Dプリンター事業に注力している。2021年11月には、久喜第2工場内に3Dプリンターのショールームを開設。「ポリマー・ソリューション・エキスパート」をキャッチフレーズに掲げる同社にとって、3Dプリンターは大きな武器となっている。「3DプリンターはSDGsやDXに貢献し、顧客の課題や社会課題の解決にも繋がる。そのためにも、ショールームをぜひ見に来てほしい」と話す堀田秀敏社長は、3Dプリンターに大きな可能性を見出している。

堀田秀敏社長


 

フィラメントの開発・販売、受託加工サービス、本体の販売・開発を手掛ける

 ホッティーポリマーは、FDM方式(Fused Deposition Modeling/熱溶解積層方式)やMEX方式(Material Extrusion/材料押出積層方式)の材料となるフィラメントの開発・販売、3Dプリンターを用いた受託加工サービスだけでなく、3Dプリンター本体の販売・開発も手掛けている。

 フィラメント開発は堀田社長の発言がきっかけだ。「以前のFDM方式のフィラメントは、PLA(ポリ乳酸)やABS(アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン)を用いたものが主流だった。ただ、それらは樹脂のため、得られる造形物は硬質だ。当社はゴムメーカーなのだから、ゴムライクな柔らかいものが造形できるフィラメントを開発できないかと伝えた」(堀田社長)。

 同社はゴムメーカーとして特有のコンパウンド技術を有し、素材に関してもゴム、樹脂ともに自社で開発する体質がある。試行錯誤を重ねた後、2016年に上市したのがHPフィラメント(スーパーフレキシブルタイプ)だ。それまで世界になかった柔軟性の高いフレキシブルなタイプで、その後も同社は、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)タイプやPPS(ポリフェニレンサルファイド)タイプといったスーパーエンプラ系と呼ばれるフィラメントもいち早く上市した。現在は生分解性や木質といった、環境に優しいフィラメント開発を急速に推し進めている。特殊でオリジナル性のあるフィラメントと言えば、HPフィラメントシリーズというブランド戦略のもと進めている。

 フィラメントを開発したことで、堀田社長は3Dプリンター分野の深掘りを決めた。「他社と差別化したサービスが可能になるため、3Dプリンターは武器になると感じた」(同)。2019年からは3Dプリンター事業を本格的にスタートし、3Dプリンター本体の販売も開始した。

3Dプリンターで製作した臓器関連サンプル


 3Dプリンター本体の販売は、数ある3Dプリンターメーカーの中から、Flashforge社、RAISE社、INTAMSYS社と代理店契約を結んだ。Flashforge社は低価格な入門用3Dプリンターを、RAISE社はハイパフォーマンスの業務用3Dプリンターを、INTAMSYS社はPEEKなどスーパーエンプラの造形が可能な先進的3Dプリンターを得意としている。3Dプリンター事業を本格的にスタートしたことで、2019年にはキャッチフレーズを、従来の「ゴムと樹脂の押出専門メーカー」から「ポリマー・ソリューション・エキスパート」に変更した。

 2020年には、液状シリコーンゴムを100%使用した世界初のLAM方式(Liquid Additive Manufacturing/液体積層造形方式)の3DプリンターであるinnovatiQ社の「L320」を、国内でいち早く導入するとともに、同社と代理店契約を結び、販売も行っている。「L320」は、2つの液状のシリコーンゴムをブレンドし、それを押出して層を造形する3Dプリンターで、引張強度や伸びなどは金型成形品と同等の物性を有した造形物を製作できる。「当社はゴム企業であり、シリコーンゴムの3Dプリンターには非常に興味があった。どこよりも早く導入し、研究を進めた。現在、3台有しているが、受託加工サービスの依頼が殺到しており、空きはない。積層痕が残る、スピードアップ、着色といった課題はあるが、引張強度や伸びなどは金型成形品と同等で、金型成形品では実現できないような中空成形もできる。また、当社自身で言えば、3Dプリンターで別々に製作した部位を3Dプリンターで架橋する、架橋接合という特許も取得した。可能性は無限大にあり、これからもどんどん改良を図っていく」(同)。

 堀田社長は、3Dプリンターを使うことが「SDGsやDXにも貢献する」と強調する。フィラメントの素材であるPLAは植物由来のカーボンニュートラル素材であり、加えて、無駄な工程をなくすことは生産性向上に繋がる。また、企業間で社会問題となっている、補用部品の金型保管問題の解決に向けた一手にもなる。近年は是正されつつあるが、例えば年に10、20個しか注文されない補用部品を3Dプリンターで製作できれば、金型の保管が不要になる。「様々な社会課題を解決できる点は、3DプリンターがSDGsに貢献していることを表している」(同)。カメラを搭載している3Dプリンターを使えば、遠隔で様々なサービスを提供できるため、SDGsだけでなく、DXへの貢献にも繋がる。

久喜第2工場内にはショールームを開設

久喜第2工場内のショールーム


 2021年11月には、久喜第2工場内に3Dプリンターのショールームを開設した。MEX方式を中心に、光造形、LAM方式など様々な方式の3Dプリンターが16機種24台設置されており、見学が可能だ。「3Dプリンターで顧客が何を製作したいのかによって、提案する3Dプリンターの機種やグレードは異なる。LAM方式の3Dプリンターは高価だが、中小企業の当社が取り扱う樹脂の3Dプリンターは100万円前後が主流だ。樹脂の3Dプリンターを業務用で使用するなら、特別高価なものは必要なく、100万円前後の機種で十分と伝えている。どのような素材で何を作りたいのかを当社に聞いてもらえれば、その問いに対し最適な提案ができるし、ショールームに来てもらえれば、顧客は最適な決断ができる」(同)。

 多くの業界から受注し、ゴム業界にもすでに数社に対し納入している。「3Dプリンターそのものは、それほど数多く売れるものではないが、当社にはフィラメントがあり、受託加工サービスもある。会社の売り上げ全体でみれば、依然としてコア事業が圧倒的だが、3Dプリンター事業はコア事業の顧客に対してもサービスとなり、相乗効果は少なくない。顧客のニーズによっては、3Dプリンターだけでなく、それ以外の違うアプローチを提案することもできる。当社に相談してもらえれば、必ず適切に回答する。これほど3Dプリンターを取り揃えているゴム・樹脂メーカーは他にないと思う」(同)。

 3Dプリンター事業の未来について堀田社長は、2019年に定めたポリマー・ソリューション・エキスパートに繋げるための大きな武器と捉えている。「フィラメント開発、受託加工サービス、3Dプリンター本体の販売と開発を3Dプリンター事業の3本柱とし、最終的にはポリマー・ソリューション・エキスパートを目指す。ゴムや樹脂といった高分子素材の顧客の課題を3Dプリンターで解決することが最も重要だ。3Dプリンターという武器によって、顧客の課題や社会課題を解決していきたい」(同)。
 

Webサイトの会社案内動画を刷新

 ホッティーポリマーはこのほど、同社Webサイト(https://www.hotty.co.jp/)に掲載している会社案内動画(https://youtu.be/nVe1yRSjmJQ)を刷新した。3Dプリンターに関する取り組みも詳しく紹介されている。またWebサイトでは、SDGsに関する堀田社長の取り組みも紹介されており、「ぜひ当社サイトを訪れ、刷新した会社案内含め目にしてほしい」(堀田社長)。

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