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フレイル対策での活躍に期待

住友理工、体幹を可視化する「運動センサ」

工業用品 2020-04-28

 厚生労働省は2020年4月から、75歳以上の人を対象にした既存の後期高齢者医療制度健診の中に「フレイル健診」を導入することを発表した。フレイルとは身体や精神、社会的なネットワークの脆弱性により、要支援・要介護になる前段階のことを指す。対象者の状態に合わせ、運動、栄養摂取、社会活動への参加など適切な介入を行うことで身体能力の低下を止め、健康状態に戻すことを目的としている。

運動センサ。圧力分布を検知するセンサ(下)と体の動きを可視化するカメラ(上)を用いる


測定の様子


 

楽しく測定し、体を支える能力を見える化

 住友理工は現在、九州大学、糸島市(福岡県)とともに、発見が比較的容易で改善が行いやすい「身体的フレイル」に特化したフレイル対策に注力している。3者は、「健康」「医療」「介護」事業における連携協力を目的とした協定を締結している。住友理工は、3者の共同研究成果を生かしたフレイル予防事業の確立を目指しており、2021年度には糸島市が展開予定のフレイル予防事業に参画する考えだ。

日比野真吾・新商品開発センター新事業商品開発部主任研究員兼九州大学ヘルスケアシステムLABO糸島駐在


 同対策において活躍が期待されるのが、同社が九州大学と共同研究を行っている「運動センサ」だ。同製品は、「体を支える力(体幹)の可視化」による運動能力測定と訓練を促す製品。足の裏にかかる圧力分布を検知するセンサと、体の動きを可視化するカメラを用いることで、動作を「見える化」し、利用者の運動能力を測定する。センサには、住友理工独自開発の柔軟導電ゴム材料「スマートラバー(SR)」が使用されている。「既に発売しているSRソフトビジョン(=体圧を検知する面上の圧力センサ)と原理は同じだが、新たに、立って動く際の重心の可視化といった固有の機能を搭載している」(日比野真吾・新商品開発センター新事業商品開発部主任研究員兼九州大学ヘルスケアシステムLABO糸島駐在)。
 

利用者に正しい運動を促し、改善に寄与

 運動センサのコンセプトは、「楽しく測定し、体を支える能力を見える化する」こと。センサの上で運動することで、正しい運動を利用者に促し、改善に寄与する。「従来のフレイル健診は、問診を中心とした主観的なもので、判定の基準があいまいな部分もある。運動センサ等の測定機器を使用することで、客観的にデータを集め、科学的な介護を目指したい。客観的なデータがあれば、何を頑張れば改善できるのか、目標を提供することにも繋がり、利用者が努力しやすい環境を作ることもできる。また、運動指導者のサポートにも繋がる。

 最終的には遠隔での使用も想定している。使用場所としては、自宅や公民館、老人ホームなど、身近な場所で使えることが重要と考えている」(同)。

 また、継続しないと効果が持続しないことから、利用者を飽きさせない仕掛け作りも重要と考えている。

 「評価結果を点数化することで、ゲーム感覚で楽しんで利用してもらう。一人ではなく、複数人で一緒にやってもらうことで、コミュニケーションの活性化も期待できる。

 また2019年に3者の活動拠点である九州大学ヘルスケアシステムLABO糸島(愛称:ふれあいラボ)で実施した実証実験で、運動センサは特にフィードバック効果に有用であることが確認できている」(同)。

 現在運動指導者は、目視や動画解析を元に運動が適切に行われているか判断している。しかしその場合、重心が動いていないなど、運動強度が足りず改善まで至らない場合や、改善しても途中で効果がなくなってしまう場合もある。そのような悩みの解消に、運動センサが寄与できると期待されている。運動指導者へのヒアリング結果からも評価する仕組み作りを求める声が多く、できるだけ早期の実用化を目標としている。

 運動センサを用いた評価データはまだ2019年度のデータしかない。ふれあいラボから外部へ、もっと大規模にデータ収集ができれば、新たな指標や活用法に繋がる。

 そのためには、ふれあいラボのような実証場の拡大も大きな課題だ。

 「参画企業の増加や、市民とのコラボレーションを強化し、最終的に街づくりへ繋がっていくような、リビングラボ化(=新商品や新サービスの開発にあたり、生活者も参加する共創活動やその拠点)も構想したい。当社単独では難しいが、今の活動がその一端になればと思う。他者とのコラボレーションの可能性も探っていきたい。

 最終的には、フレイル予防を行うことで、医療・介護費の削減へ繋げることが理想だ。我々の活動がそうしたことに繋がっていけばと思う」(同)。

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