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独自の高減衰ゴムで地震の揺れを効率良く吸収

熊本地震でも効果発揮した住友ゴム工業の「MIRAIE」

工業用品 2016-09-20

運動エネルギーを熱エネルギーに変え、吸収・発散する高減衰ゴム

運動エネルギーを熱エネルギーに変え、吸収・発散する高減衰ゴム


 住友ゴム工業の住宅用制震ダンパー「MIRAIE」が熊本地震でその効果を発揮し,高い評価を得た。4月14日,最大震度7を記録した熊本地震。のちにそれは前震に過ぎなかったことが2日後の16日に発生した震度7の本震で明らかになり,それ以降も余震が頻発した。「MIRAIE」は開発当初から,“本震から繰り返し発生する余震に断続的に効果を発揮することで,住居を守る”と訴求し続けてきた。「熊本地震は4月14日の発生時から16日の3日間で震度7が2回,6強が2回,6弱が3回発生するなど大きな地震が続き,多大な被害をもたらしたが,最大震度を記録した益城町付近にあった複数のMIRAIE装着住宅はいずれも目立った被害はなかった」と地震発生直後に熊本入りして調査にあたった同社のハイブリッド事業本部の松本達治制振ビジネスチームリーダーは語る。熊本地震での「MIRAIE」の効果を聞いた。

繰り返しの揺れから住居を守る

 熊本県内を走る布田川断層帯と日奈久断層帯の2本の断層帯が起因となった熊本地震。地震がもたらした多大な被害は益城町を中心に断層に沿って,熊本から大分にまで伸びた。

 「熊本地震発生前までのおよそ3年間でMIRAIEを装着した住宅は九州県内におよそ900棟を数えるに至っていました。熊本地方は,九州の中でも家づくりへの関心が高い土地柄と聞いています。家自体の規模も比較的大きい建物が多く,大切にするお土地柄のようで,一般の市民の方も地震から守る“制震”については理解が早かったですね。実は地震発生時,私は福島にいて東日本大震災の被災地での経過を調査していたところで,熊本の地震を知ると16日には鹿児島経由で熊本に入りました。その後も何度か現地を訪れ,MIRAIEを装着した住宅について,被害の状況を1棟1棟確認してまいりましたが,すべてお住まいいただくことができる状態であることが確認でき,ほっとしました。中でも建築中で壁も設置されていない未完成の住居が,柱とMIRAIEだけで地震に耐えていたのには驚きました」(松本制振ビジネスチームリーダー)。

松本制振ビジネスチームリーダー

松本制振ビジネスチームリーダー


 MIRAIEは,住友ゴム工業がタイヤメーカーとして長きにわたって蓄積してきたゴム配合技術をフルに活用し同社独自の高減衰ゴムを開発,振動エネルギーを熱エネルギーに変換することで地震の揺れを効率良く吸収する。熊本の震災後,地元熊本をはじめ全国ネットのテレビの情報番組で高減衰ゴムの共同開発者である五十田博京都大学生存圏研究所教授や,竹脇出京都大学工学研究科教授の解説でもMIRAIEの機能と有効性が取り上げられるなど注目が高まっている。

 「熊本地震での被害の事態が明らかになると,現状の建築基準法の耐震基準で十分なのかどうかという議論が起こりました。そこで震度7規模の地震動を複数回受けた場合でも,家屋へのダメージを軽減するような制震システムへの重要性に関心が高まってきたのです。MIRAIEは地震で生じる揺れを独自に設計した高硬度な高減衰ゴムで吸収して熱に変換するとともに,アンカーボルトで基礎と緊結することで,本震だけでなくその後に繰り返し発生する余震から家を守ります。また在来工法用に加え,2×4(ツー・バイ・フォー)工法用もラインアップしています」(同)。

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