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ミズノと共同開発した「Q3」

住友理工、卓球ラバーに生かされた防振ゴム等のノウハウ

工業用品 2018-02-13

開発を担当した間瀬昭雄氏


 住友理工の基幹製品である防振ゴムは、車体に発生する振動をいかに吸収するかが大事になる。「エネルギーロスを限りなくゼロに近づけ、全く吸収することなくそのまま跳ね返すということは、防振ゴムとは真逆の性能になる。そこを突き詰めていく際に、防振ゴムで培ってきた知見、考え方が役立った」(同)という。肝となったのは配合技術だ。卓球ラバーはボールがインパクトし離れる間に、ラバー内面の凹凸部がつぶれて元に戻ろうとする復元力が働くが、その復元力を高めるために開発したゴムが「XL(クロスリンケージ)52/3」。52/3は、52番目の基本配合のパターン3を表す。同ゴムを採用することで、スピード性能、スピン性能ともに従来品に比べ約5%アップした。

 共同開発をスタートしたのは、2015年4月。完成までには1,000種に及ぶゴムの配合を積み重ね、3,600回のテストを実施した。「自動車とスポーツという分野の違いは考え方も異なる。新しいパートナーとして信頼や新たな情報を得るために、毎週のように大阪のミズノ本社で打ち合わせ、評価を繰り返した」(同)。

 生産は小牧製作所で行っている。自動車と比べ開発から量産に至るまでの期間が短いところは苦労したものの、自動車部品で培った、均一な品質で量産できるノウハウが生きた。

 「Q3」の販売目標は、グローバルで年2万4,000枚。昨年10月の卓球専門誌の卓球用具を対象とした売り上げランキングでは、月中の発売にもかかわらず初登場10位。出だしは好調だ。

 「東京オリンピックに出場する選手に使用して欲しい。これからも、今の性能に満足することなく、より高い性能を求めていきたい」と、間瀬氏は先を見据えていた。

 ■取材メモ
 開発を担当した間瀬氏は、中学、高校と卓球部に所属していた。今回、開発に携わったのは偶然らしいが、「縁と感じた」と話す。卓球プレイヤーとしての自分については「レベルは大したことない」と謙遜するものの、「求めている性能については、打ち合わせの中でスッと理解しやすかった」そうだ。

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