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【工場探訪】

「技術開発の起点」TOYO TIRE仙台工場

タイヤ 2019-06-10

 TOYO TIREグループのタイヤ生産拠点は現在、世界に4カ国、7拠点ある。その中のひとつが仙台工場(宮城県岩沼市)。同工場は桑名工場(三重県員弁郡)とともにTOYO TIREのマザー工場として、全世界へタイヤを供給するとともに、各拠点へ生産に関する技術発信を行っている。仙台工場の取り組みとは。

TOYO TIRE仙台工場



 仙台工場は1962年に東北トーヨーゴムとして設立。64年にPC(乗用車用)バイアスとTB(トラック・バス用)バイアスタイヤ、71年にPCラジアルタイヤの生産を開始した。78年に東洋ゴム工業(現TOYO TIRE)と合併。2002年にはTOYO TIRE独自の工法であるA.T.O.M工法での生産を開始した。18年には天然ガスコージェネレーションシステムを稼働し、19年にはその2基目が稼働した。

 主要生産品はタイヤだ。セダン用からUHP(ウルトラハイパフォーマンスタイヤ)、SUV用、ミニバン用まで車両特性に応じた商品、また、低燃費やスタッドレスなど用途に応じた商品を生産しており、乗用車用からSUV用など大型車両用までラインアップは豊富。外観に優位性のある商品のひとつであるホワイトレターやレース用タイヤは仙台工場でのみ生産している。

仙台港のタイヤ輸出量日本一に大きく貢献

物流倉庫の様子


 海外出荷比率は80%。2018年度実績で欧州が34%、北米が30%、その他中南米やアフリカ、中東などが17%を占める。同比率が8割に上るのは、仙台工場の立地が関係している。海外出荷で利用される仙台港まで車(一般道)で約60分とアクセスしやすく、タイムリーな出荷がしやすいためだ。

 同港のコンテナ貨物輸出実績を見ると、ゴム製品(TOYO TIRE)が全体の約4割と群を抜いている。ちなみに、同港のタイヤ輸出量は18年に日本一となった。TOYO TIREが大きく貢献している。

 また、世界に向けて宮城県をPRすることにも注力。「宮城でつくる喜びをかみしめながら、手間を惜しむことなく、驚きと感動にあふれるものをめざす。」をテーマに「MADE IN MIYAGI」の活動を行っている。TVCMも放映され、17年には仙台広告協会から新聞部門大賞を受賞。「県民の方からも声を掛けてもらえるようになり、県内でTOYO TIREの認知度が上がっていることを実感している」(TOYO TIRE)。

 “雇用”という観点からも、仙台工場は地域に貢献している。同工場では、1,492人の従業員が働いており、地元出身者の比率が非常に高い。岩沼市を含む近隣の仙南地区出身者がほとんどで、工場全体の約95%を占めている。今後は遠方出身者も安心して働けるように取り組んでいくという。

天然ガスコージェネレーションシステム


 18年に稼働した天然ガスコージェネレーションシステムにより、桑名工場と合わせ、同社の国内タイヤ工場で使用する熱エネルギー源が天然ガスへと転換された。

 同工場で使用する蒸気と電気は、これまで石炭と使用済みタイヤを混合燃焼したコージェネレーションボイラー設備によって供給していた。しかし、工場がある宮城県岩沼市で、天然ガスを安定的に供給するためのインフラ設備(相馬LNG基地および新潟・仙台間ガスパイプライン)が17年から整備されたため、このような設備の完成・稼働に至った。この天然ガス化により、従来20年に05年比15%削減の計画だった工場のCO2排出量は、19年に05年比で25%削減と、期間の前倒し、削減幅の上積みを見込んでいる。

ここでしかつくれないもの、高品質なものをつくり続けていく

 今後の課題としては、「自動化」や「デジタル化」を挙げる。工場内の自動化は進んでいるが、「タイヤのジョイント部分の手直しで人の手はまだまだ必要。完全自動化のハードルは高いと考えている。また、外観検査も機械のみは難しい。検査員による人の手は必要だ」(戸田博也製造部長)と話す。デジタル化に関しては、「IoTのセンサを工場内の一部機械に取り付け、ビッグデータ収集を図っている。不良率削減、性能・品質の向上にどう役立てていくか解析する予定だ」(小野元靖技術課長)という。これらの課題は、仙台工場のみに限らず、社内全体の課題として今後も取り組んでいく方針だ。

 今後の仙台工場の役割について、野村義行仙台工場長は「量を増やしていくよりも“何をつくっていくか”。ここでしかつくれないもの、高品質なものをつくり続けていくことが我々の使命だと思っている」と話す。仙台工場は、TOYO TIREのマザー工場として技術開発や高付加価値商品を提供するだけではなく、地域に密着した活動にも注力している。今後もTOYO TIREの「技術開発の起点」、また宮城県の地域活性化にとってなくてはならない存在として在り続けるだろう。

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