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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、中東情勢緊迫の中、じり高

連載 2025-06-23

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
 JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=300円水準まで小幅上昇する展開になった。6月3日の280.00円で下げ一服となった後は290円水準で売買が交錯していたが、株高・円安・原油高といった外部環境の好転を手掛かりに、一時300円台を回復する展開になった。5月30日以来の高値を更新している。

 上海ゴム先物相場は1トン=1万3,000元台中盤で揉み合う展開になった後、1万4,000元水準まで上昇した。

 日本時間6月13日にイスラエルがイランに対する「先制攻撃」に踏み切り、中東情勢は急速に不安定化している。両国の間では激しい攻撃の応酬が続いており、先行き不透明感が急激に高まっている。地政学リスクの高まりで株価が急落するような動きがみられると、ゴム相場もつれ安するリスクがあったが、実際には世界の株価は底固さをみせており、特に日経平均株価は逆に上値を切り上げる展開になった。現時点では中東地域に限定された紛争であり、グローバルな投資環境に大きな変化をもたらす可能性は低いと評価されている。

 逆に原油相場が急伸したことが、ゴム相場を押し上げている。イラン産原油に大規模な供給障害が発生したわけではないが、供給リスクの高まりが原油相場の急伸に直結している。NY原油先物相場は1バレル=60ドル台前半から70ドル台前半まで急伸し、1月21日以来の高値を更新している。このため、原油価格の高騰を手掛かりにゴム相場も押し上げる動きがみられた。

 中東情勢に関しては、原油供給に大きな混乱が生じないのか、米国の軍事介入はあるのか、イスラエルとイランの戦闘はいつまで続くのかなど大きな不確実性を抱えているが、軍事衝突発生から1週間のゴム相場は、総じて底固く推移した。

 引き続き通商環境の改善期待もポジティブ。米中間で通商協議が再開されたこともあり、通商環境に対する過度の警戒感が後退している。中国がレアアースの輸出規制緩和を表明しているため、自動車生産のサプライチェーンの問題が緩和されるとの期待感もポジティブ。ただし、日米通商協議と首脳会談で目立った進展がみられないなど、通商環境が大きな変化をみせているわけではなく、ゴム相場に対する影響は限定された。

 タイ中央ゴム市場(ソンクラ地区)のRSS現物相場は、6月19日時点で前週比0.2%安の1キロ=68.75バーツ。産地では局地的な豪雨が報告されているが、大規模な洪水被害などの報告はなく、逆に季節的な増産圧力が強まりやすい環境はネガティブ。もっとも、産地相場は消費地相場との連動性を重視した展開が続いており、産地主導の売買は見送られている。

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