【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、トランプ関税で急落続く
連載 2025-04-14
マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=281.00円まで急落し、2024年2月以来の安値を更新した。トランプ米大統領が4月2日に発表した相互関税が予想されていたよりも厳しい内容との評価から、世界経済の減速懸念を織り込む形で急落した。世界の株式相場のほか、原油や銅相場なども急落しており、その流れの中でゴム相場も一気に値位置を切り下げた。

上海天然ゴム先物相場は、1トン=1万4,000元台まで急落した。相互関税発表前は1万6,000元台で取引されていたが、そこから一気に2,000元幅の急落地合になっている。2024年7月以来の安値を更新した。
米国と世界の通商環境が急変していることが、ゴム相場を大きく下押ししている。トランプ大統領が発表した相互関税では、各国で税率が異なるが、米国が大きな貿易赤字を抱える国に対して厳しい対応が講じられている。中国が34%、日本が24%、韓国が25%、欧州連合(EU)が20%などとなっている。中国政府は相互関税に対して4月4日に米国からの全輸入品に34%の関税を課すと報復措置を発表。トランプ政権はそれに対してさらに50%の追加関税を発表し、中国政府も同じく50%の追加関税を発表するなど、関税の応酬が行われている。4月10日時点だと米国の中国に対する税率は125%、中国の米国に対する税率は84%となっているが、先行きの見通しが立たない状態に陥っている。
トランプ大統領は、相互関税について交渉を求めてきた国に対しては、10%を超える相互関税の上乗せ分について、90日間の停止を発表している。この発表を受けて株価と同様にゴム相場も安値から切り返したが、それでも300円の節目割れの低迷状態が続いている。このまま米中両国が関税の応酬を続ければ、世界経済の急減速は避けられないとの悲観的な見方が優勢になっている。
日々状況が変化しているために先行きが見通せない状況の中、300円の節目割れでも値頃感や割安感から買いを入れることには慎重ムードがみられる。大手金融機関は米経済のリセッション(景気後退)入りの予想確率を相次いで引き上げているが、中国経済の不確実性も急速に高まっており、ゴム需要の急減リスクがゴム相場の値下がりに直結している。通商環境がどのような展開を見せるのかによって、上下双方に大きく動きくブレるリスクを抱えた地合になっている。
タイ中央ゴム市場(ソンクラ地区)のRSS現物相場は、4月10日時点で前週比13.1%安の1キロ=62.30バーツ。4月初めは70バーツ台前半で取引されていたが、消費地相場の急落を受けて、産地相場も急落した。
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