白耳義通信 第99回
「2025年の幕開け」
連載 2025-01-21
鍵盤楽器奏者 末次 克史
皆様、2025年の年明けはいかがお過ごしでしたか?ベルギーは強風の中で新年を迎えました。例年だと街の中心地で華やかなカウントダウン花火が打ち上げられるのですが、今年は多くの街で中止に。アントワープやブリュッセルといった、周囲に引火の危険が少ない場所だけで開催されました。
残念ながら、ベルギーの年明けでは毎年お決まりのようになってしまった「暴動」も発生しました。ニュースでは、暴徒化した人たちが警察車両を襲ったり、駐車中の車に火をつけたりしている映像が流れています。ストレスを発散したいのか、ただ騒ぎたいだけなのか…。なんとも複雑な気持ちにさせられます。
さて、新年といえば外せないのがウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のニューイヤー・コンサート。今年はリッカルド・ムーティが7回目の指揮を担当しました。この回数は、1980年以降ではロリン・マゼールの11回に次ぐものだそうです。ちなみに来年は、カナダ出身のヤニック・ネゼ=セガンが初めてこのコンサートを振る予定なんだとか。
ベルギーには日本の初詣やおせち料理のような新年の伝統行事がありません。でも、このコンサートを観て「今年が始まったな」と感じる人は少なくないようです。
近年気になっているのは、クリスマスシーズンの装飾がなんだか控えめになっていること。コロナ前までは、どのお店も盛大にデコレーションをして、街全体がキラキラしていたんですが、最近はショーウィンドウや入口を少し飾るだけ、というお店が増えました。やはり、コロナ禍を経て多くの店が経済的に厳しくなったのかもしれません。
そんな中、頑張っているのが低価格で食品や雑貨、衣料品を扱う「バラエティーショップ」です。特にオランダ発のHEMAは有名で、今シーズンはミッフィー(オランダ語ではネインチュ Nijntje)とのコラボ商品が大ヒット! 棚が空っぽになるほどの人気ぶりでした。日本にはまだ進出していないのが少し残念です。
一方で、高級食品店も相変わらず賑わっています。オーガニック製品を中心に扱うこれらのお店には、しっかりとした身なりのお客さんが多く訪れていて、なんだか別世界のようです。これからは、消費者の「二極化」がもっと進むのかもしれません。
最近のAI化の加速による面白い光景もあります。スーパーマーケットの無人レジ、便利そうに見えますが、実際は「店員を呼ぶランプ」が点灯して大行列になっていることも。結局、一人の店員さんが大慌てで対応する羽目になっているのを見て、「サービスってなんだろう?」と考えさせられました。有人レジも店員削減の影響で長蛇の列。なんとも不思議な時代です。
さて、2025年はどんな年になるのでしょうか。今年は巳年で「成長」「変革」「再生」の象徴と言われています。年男の私も、このテーマに乗っかって新しいことに挑戦していきたいと思います。皆さんにとっても素晴らしい一年になりますように。今年もどうぞよろしくお願いします!
【プロフィール】
末次 克史(すえつぐ かつふみ)
山口県出身、ベルギー在住。武蔵野音楽大学器楽部ピアノ科卒業後、ベルギーへ渡る。王立モンス音楽院で、チェンバロと室内楽を学ぶ。在学中からベルギーはもとよりヨーロッパ各地、日本に於いてチェンバリスト、通奏低音奏者として活動。現在はピアニストとしても演奏活動の他、後進の指導に当たっている。ベルギー・フランダース政府観光局公認ガイドでもある。
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